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2020-01-30 16:28
犬猿の仲―アメリカとイラン―
船田 元
衆議院議員
昨年末、トランプ大統領がイランの革命防衛隊のスレイマニ司令官をイラクのバクダッドで殺害、その後イランが弾道ミサイル攻撃を行い報復した。両国関係は最悪の状態に陥ったが、お互いは全面戦争を望んでおらず、当面は緊張と小競り合いの繰り返しになりそうだ。イランも圧倒的な軍事力を持ったアメリカと本格的に戦闘することは好まず、アメリカ側も欧州はじめ国際世論を気にせざるを得ない状況だからだ。取り分けイランは第二のイラク、サダム・フセインにはなりたくないようだ。
アメリカとイランの対立は今に始まったことではなく、過去40年来緊張状態にあった。かつてのパーレビ国王は親米的だったが、1979年のイスラム革命で亡命の憂き目に遭った。最後はエジプトに逃れたが、途中でアメリカが匿っていた。それに反発してテヘランの学生らが、アメリカ大使館を占拠して多くの人質を取るという事件が発生した。当時のカーター大統領のもとで救出作戦(イーグルクロー作戦)が展開されたが、失敗により多くの犠牲者を出した。
その後もレーガン大統領当時、イラン・イラク戦争が続いたが、劣勢のイランに対して武器を売却した資金を、ニカラグアの反政府勢力に隠密に提供したとされる「イランコントラ事件」も1986年に発覚した。最近では2010年代にイランが核開発を進めているのではないかとの懸念が示され、2016年に欧米との間で核開発凍結の合意が行われた。しかしこれに不満を示すトランプ大統領は、一方的にこの枠組みから離脱して、独自制裁を課していた。このように米イラン関係は常にギクシャクしてきたのである。今後情勢がどう変化するかは予断を許さないが、イランも今後は報復を自制するだろう。トランプ大統領は自らの選挙を意識して、保守派や強硬派をつなぎとめるため強硬姿勢を続けるが、中東地域全体への影響や欧州との信頼関係維持、さらに総力戦ともなると国際世論が反発することも考えて、寸止めするだろう。
アメリカとイランの関係をこのように時系列で見ても、アメリカ側に安定した政策対応が見られないことは残念である。またエルサレムをイスラエルの首都に勝手に決めたように、他の中東地域への対応にも首尾一貫性がない。またこれはトランプ現政権に限らず、歴代のアメリカ政権が犯してきた過ちは数え切れない。その一方で日本は少なくともイランとの長年の友好関係を保っており、他の中東諸国との外交関係も概ね良好を保っている。日本が米イランの仲介をするという段階には既にないが、アメリカに対してアドバイスすることは十分可能ではないか。国内問題でやや失点の多くなっている安倍総理にとっては、ここが挽回の勝負どころではないだろうか?
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