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2007-08-15 18:42
世界の進展と日本の政治
坂本正弘
日本戦略研究フォーラム副理事長
例年、8月は日本にとっては、広島、長崎、第2次大戦での敗戦・15日が続く、重い月である。しかも、先ほどの参院選での結果は衆議院とのねじれ現象を生み、日本政治の中期的混迷を予想させる状況すらある。今年春の中国の温家宝首相訪日の印象は、柔軟だが、筋金入りの政治家を演出したが、日本の現状と比較し、日本の政治の仕組みが、今後の世界、アジアの激流に耐えられるのか、改めて問いたいところである。
最近の米国の動向で目立つのは中国責任国家論がますます強くなっていることである。経済問題では、ポールソン財務長官と呉儀副首相がコンビを組み、貿易摩擦にしろ、かつての日本と異なり、中国の輸入が急拡大し、世界を支えており、しかも、種々の問題への中国指導層の反応が早いとの評価がある。6者会談の状況を見ても、アジアでは、中国との関係が鍵であり、日米豪印連携の構想は陰りさえある。
中国はこの秋、第17回共産党大会があるが、米国の識者は中国での権力の平和的交代を評価する。胡錦濤・温家宝ラインが再選されることは確実であろうが、18党大会での胡錦濤の後継者に絡む世代交代の人事が進行すると見ている。共産党総書記は2期10年に及ぶ大きな権力をもつが、7千万人の党員を擁する党内での激甚な闘争を経たものが選出されている。胡錦濤氏は1964年共産党入党、84年中国共産主義青年団第一書記、85年中央委員常務委員、以来、貴州省およびチベットの共産党第一書記、92年共産党政治局常務委員、98年国家副主席、2003年共産党総書記就任の履歴を持つ。それはまさに、共産党独裁の過酷さと共に、党・国家の代表としてすさまじい修練を積んだ履歴である。温家宝首相もこれに劣らない淘汰、競争の履歴を持っている。
今年から来年にかけて、米、中、ロ、韓、台と多くの国で指導者・指導層の交代がある。アメリカでは大統領選はすでに酣である。かつて、筆者は、米国の大統領選挙は、時日と資源をかけすぎていないかと考えていた。2月からの各州の予備選のたびに、候補者は神経を尖らせ政策を調整し、夏の党大会で候補者が絞られ、11月の大統領選にいたるのだが、この過程は、ポピュリズムと長丁場過ぎないかとの感慨である。しかし、最近は、2期・8年の世界の大統領選出のためであり、選挙の長丁場は米国民の有効な政治教育の機会であり、これが世界を主導する候補者の選択に繋がるのであれば妥当だと思う次第である。
日本では2年前の衆院選に引き続き、参議院選挙でも、若手が進出し、政界は若返ったが、中国指導者層の強い履歴にどう対応するか?また、日米同盟を今後どのように持ってゆくのか?かつて、中曽根首相は、首相たるものは首相となるための長い修練が必要だとしたが、日本の政治の中に世界との対応での主導の仕組みをどのように作ってゆくのか?酷暑の中、改めて問う次第である。
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