4月7日、日本政府は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、緊急事態宣言を発令しました。同宣言の対象となる各7都府県では、それぞれの実状に応じて、最適と判断される措置を講ずることが期待されています。感染経路が不確定の感染者の急増に伴い、従来の検査・追跡・隔離だけでは感染拡大防止が困難という現状認識に基づき、個人や企業・団体に対する集会・移動制限措置はやむを得ない措置と考えます。いずれにせよ都市封鎖(ロックダウン)による経済への大幅な打撃や社会的混乱だけは絶対回避しなければなりません。
そうした中、日本政府は、昨4月8日に漸く、緊急経済対策を発表しました。しかし、その中身を見て唖然としたことは、あたかもCOVID-19の急速な感染拡大が数週間で終息するかのように、また本年第2四半期には年率換算でマイナス実質11.1%(MUFJRC予測値)減速予定の日本経済の成長が済やかに回復するかのように、僅か18.6兆円という少額の新たな財政支出措置しかとろうとしていないことです。
今回の安倍政権の緊急経済対策は、急速な感染拡大に直面して客足が減少した業界・企業、特に中小零細企業にとっては短期的な救済策として重要ですが、安倍政権が目的とする雇用水準維持、雇用構造の改善および国民の生活安定、これらを通じた即効性ある景気回復に対しては有効性に欠けるだけでなく、そのおびただしく多種多様な政策メニュー(施策)は実施上からも非効率であり、さらに我が国の中長期的な財政・経済の健全・持続性にも貢献しません。
そもそも政府は細部にわたる市場介入によって、需要者と供給者が国内外のあらゆる状況の変化に対応した市場経済の自由取引がもつ本来の有効性、効率性、適時性、即効性、公平性、透明性などを奪う「政府の失敗」をもたらさないように細心の注意を払わなければなりません。COVID-19対策においても、正にこのような社会的市場経済の諸原則に則した経済対策が不可欠です。そこで私は、現下のCOVID-19禍における緊急経済対策を提言したく、下記のリンクのとおり取りまとめましたので、みなさまのご参考に供します。
■役員・研究員等最新論文
政策提言:新型コロナウイルス禍における緊急経済対策
https://www.jfir.or.jp/j/article/hirono/200409.html