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2020-07-16 23:18
米中の「ライバル・パートナーシップ」
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
新型コロナウイルス感染拡大という事態を受け、米中関係は非難合戦の様相を五呈している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、今年1月から3月にかけて中国の武漢市を中心に広がり、その後世界大に拡大した。米国では、ドナルド・トランプ大統領をはじめとする政権幹部たちがウイルス感染拡大を中国の対応のまずさのせいにしている。とはいえ、アメリカは新型コロナウイルス感染拡大への対応が遅かった。
新型コロナウイルス感染拡大の中での大統領選挙とあって、共和党の現職ドナルド・トランプ大統領、民主党の内定候補者ジョー・バイデン前副大統領が共に相手を「中国に対して弱腰だ」という批判を行っている。こうした状況では、いずれの候補が当選しても中国との協力は難しい。様々な分野で競争相手となる米中両国であるが、疾病の世界的感染拡大、感染爆発という事態には協力して対処しなければならないと言う点では主張が一致している。この超大国同士の微妙な関係を表すキーワードとして、『ザ・ヒル』の記者であるアルバート・ハントはケネディ大統領のある言葉を引用している。その言葉とは、「ライバル・パートナーシップ」だ。
冷戦期、アメリカとソ連は東西両陣営に分かれて鎬を削ったが、徹底的な対決は回避した。これをアメリカの歴史家ジョン・ルイス・ギャディスは「長い平和」と呼んだ。代理戦争を戦わされた朝鮮半島、ベトナム、アフガニスタンの人々にとってはどこが長い平和なのかと怒りを覚えるであろうが、ここでいう平和とは世界大戦がなかったという意味である。21世紀の米中関係に関しても「新冷戦」という言葉が使われ始めている。ブルッキングス研究所所長を務めるジョン・アレン(退役海兵隊大将)は、「アメリカは『自由主義的資本主義』のモデルを提示し、中国は『権威主義的資本主義』のモデルを提示して世界にアピールしている」と述べている。これが新しい冷戦の軸ということになるだろう。
ソ連は自国の経済を崩壊させ、消滅した。一方、中国は経済力を急速に伸ばし、それにつれて政治力と軍事力を増強している。経済力での米中逆転は視野に入っている。こうした状況になり、冷たい戦争が覇権交代をめぐる熱い戦争にならないためにも、ライバル同士のパートナーシップとアメリカの軟着陸が21世紀中盤の重要な要素となるだろう。
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