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2021-05-21 12:48
東京オリンピックを安心安全に開催するために
古閑 比斗志
医師
2021年7月28日から開催されるオリンピック・パラリンピックは平和の祭典である。1964年の東京オリンピックのとき、私は4歳だったが、テレビで見て感動し、その気持ちを思い起こして今回はぜひボランティアに協力したいと思っている。そういうことで、わたしは東京オリンピックのプレスセンター(お台場の東京ビッグサイト)でボランティア活動をする予定であったし、野村萬斎さんが登場するNHKの「オリンピックを待っている その2 ~1分ムービーみんなのオリンピック」にも出演するほど期待していた。だからこそ、新型コロナウイルス感染症が欧米でアウトブレーク(流行)して東京オリンピックが2020年から延期されたことには非常に残念であった。だからこそ、今年2021年には確実に開催してほしい。
オリンピックを安全に開催する方法はただ一つ、ワクチン接種である。ワクチン接種による高齢者の集団免疫化である。高齢者等の重症化しやすい方々にワクチン接種が完了すれば必然的に病床・医療資源の逼迫は解消する。ファイザーやモデルナのメッセンジャーRNAワクチンは大変有効である。ワクチン接種により感染や重症化は90%以上抑えられると聞く。IOCによれば、既に75%の選手やプレスは日本に入る前にワクチン接種を済ませているか、もしくは接種予定だとしている。他方、JOCによれば今回のオリンピックでは外国人観客の観戦は認めない方針であるが、やむを得ない。検疫所は海外から変異株ウイルスが入ってこないように日本人も外国人も入国に関して厳しいチェックをしているが、新型コロナウイルスは症状のない人や軽症の方からもウイルスが伝播し、高齢者や免疫力が低下している人々に襲い掛かるから、たとえ検疫所で水際作戦をしたとしても外国人観光客が国内で感染を広げるリスクは否定できないからだ。
菅総理は1日100万人に対してワクチン接種をすると宣言しているが、開催まで土日を含めてあと9週間しかない。この短期間に、3600万人いる65歳以上の高齢者に2回接種すると7200万回実施しなければならないということになるのだが、現状では予防接種は医師と一定の条件下の看護師にしかできず、現在の医療体制で実現できるのか疑問だ。この人手不足を解消するため、薬剤師会が協力して、薬剤師による予防接種を認める方向で動いている。ぜひ今回、米国やカナダで行われているように、薬剤師による予防接種が実現してほしい。しかしそれでもなお実現は厳しいかもしれない。
英国では国民への1回目ワクチン接種終了を優先するためメーカーの言う2回目接種時期を延期して一律12週間後までに2回目接種をする事に変更した。この結果、英国は集団免疫を早く確立させることに成功した。因みにファイザーのメッセンジャーRNAワクチンは2回目接種が3週間後であり、モデルナのワクチンは2回目接種が4週間後である。我が国も菅総理がこのような他国の先例に学んだ英断をすることによりオリンピックを安心安全に開催していただきたい。さすれば菅総理の功績は日本の歴史に残るであろう。
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