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2022-02-05 22:39
沖縄宜野湾市長選挙に見る県民事情
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設工事が進む名護市の市長選挙が1月23日に投開票され、移設を進める政府・与党が支援した現職が、移設に反対する県知事らの推した新人を破り、再選を果たした。筆者の感想は「まあ、そうだろうなぁ」というものだ。沖縄県にある米軍基地は、その全県総面積の約 10% を占め、また沖縄本島に限定すれば約 15% の面積を占有している 。日本の国土の総面積の約 0.6%しかない沖縄県に、全国の米軍専用施設面積の約 70.27% が集中している。すなわち、沖縄県が強いられている基地負担は、あまりにも他の46都道府県に比べて過重なのである。この事態は、陸上だけに限る話ではない。20の空域でもその地平総面積約95,416㎢ という宇宙までつながる無現空間を包む広大な空が訓練域として米軍管理下に置かれ、その空でたこ揚げをすれば逮捕される。同様に水域でも約54,938㎢の広大な水面が水底まで米軍の支配にゆだねられ、ここで魚を取ったり泳いだりすることは許されない。その総面積は九州全域の約1.3倍というとてつもない面積だ。
そしてこういう米軍支配は1945年6月25日、星条旗が摩文仁の丘に立てられて以来今日まで実に77年の長きにわたって続いてきた。そしてそれは日常化し今後も続いていくのである。ことほど、世界一危険な飛行場と言われて久しい普天間飛行場の移設という日本政府が米国政府に要望して実現した麗しい企画が、名護市辺野古移転と決まって10年、埋め立て工事が始まってからすでに5年経つ。辺野古の軟弱地盤が発見されても政府はこれを止めることなど気配すら見せない。その代わりといって県民に札束を用意して「誠意」を見せてくれる。それは、あくまでも「基地移転受け入れが前提」だから、これを拒否したらそれが金の切れ目になる。
金が切れたら「工事も切れる」というのであれば選択幅は広がるが、金は来ないが「工事は続く」。それなら反対を言うだけばかばかしい。この二者択一を迫られた名護市民が「合理的判断」を下すのは止むを得ず、かつ当然だ。ただし、名護市民としてもうちょっと考慮しておく必要がある。政府は米政権からの誘いに同調して盛んに台湾危機をいう。東シナ海にある沖縄県の一連の離島群は陸上自衛隊のロケット基地として急ピッチで要塞化されており、辺野古基地もその流れの中で建設されている。
バイデン政権が言うように中国の台湾侵攻がなされた暁にはこれら沖縄基地群から一斉に敵に向かってロケット弾が発射されるのはよいとして、敵弾もまたこれら基地群に向かって正確に飛来する。情勢によっては核弾頭が飛来するやもしれぬ。今や、あらゆる兵器はピンポイントの精度で攻撃目標を捕らえることができるという現実を考慮に入れておかなければいけない。名護市民が政府からもらう振興資金で町内バスが無料になったり、子供医療費・学校給食費が無料化される恩恵と中国製ロケット弾とを天秤にかけてみると、筆者ならその投票行動は少々違ってくるかもしれないのだが・・・。
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