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2022-02-22 21:36
ロシアという国
船田 元
衆議院議員
この度の冬季オリンピック北京大会では、若手を中心に日本人アスリートが躍動し、我々は大いに勇気を与えてもらった。競技中判定の疑念や氷表面の整備不足、失格基準の曖昧さなど、いくつかの問題も指摘されたが、概ね運営には及第点がつけられるのではないか。一方、問題が山積したのはロシアである。世界の各種大会でドーピング違反が相次いだため、ロシアの選手は国としての参加は認められず、ロシアオリンピック委員会(ROC)に所属する個人の選手として参加している。国旗は使えないものの、実際は国としての参加とあまり変わらないではないかと、制裁の実効性に疑問を感じる。そうした中、ロシアの新星フィギュアスケーターのワリエワ選手について、世界ドーピング防止機構(WADA)は昨年12月の検査で陽性になったとして、オリンピック参加が認められないとしたが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定により、ぎりぎり参加可能となった。しかし直後のフリー演技では失敗続きで、間違いなしとしていた金メダルどころか4位に転落してしまった。15歳の少女が大国と組織の思惑に翻弄されて、気の毒としか言いようがない。ワリエワ選手の今後が心配だ。
さらに今回のオリンピックに暗い影を落とし続けたのも、やはりロシアの存在である。ロシアの隣国ウクライナのNATO加盟をめぐって、安全保障にとって脅威であるとするロシアが、ウクライナ侵攻の時を狙っている。大量のロシア軍をウクライナとの国境付近やベラルーシに集結させ、力による圧力をかけ続け、侵攻によって現状変更を目論んでいる。
アメリカ、ドイツ、フランスはじめNATO加盟国はロシアの対応に反発して、経済制裁で対抗しようとしている。もちろん日本も協調して行動するつもりだ。1989年にベルリンの壁が崩れ、東西冷戦が事実上終焉して以来の危機とも言える。東西冷戦の復活とも目に映るが、今回はイデオロギー的対立というよりは、専制的国家群VS民主主義国家群という構図である。ロシアという国は帝政時代、共産主義時代を問わず、領土に対する執着は極めて強い。ソ連崩壊の時以外は、常に領土拡大を続けていたと言っても過言ではない。また図体は大きいのだが警戒心や猜疑心が強いという特徴もある。芸術的なレベルはとても高い。チャイコフスキーやラフマニノフの音楽、ボリショイバレエ、ドストエフスキーなどのロシア文学がある。ロシア民謡はかつて日本の「歌声喫茶」でよく歌われていた。ロシアには愛すべきものやことも多いが、やはり、法と秩序を重視しない姿勢は、何としても是正してもらわなければならない。
ウクライナ情勢がどう展開するかは予断を許さないが、世界の為政者も我々も「悪の帝国」と決めつけることなく、もう少しロシアの人々やプーチン大統領の思考経路をよく分析して、首尾よく対応していく必要がある。ロシアに対するにはただ恐怖心を煽るだけではなく、現実的な代替案の提示や、彼らの安全保障上の立場を斟酌することなどにより、安定した関係を築く努力は決して無駄にならないはずだ。
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