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2022-05-16 10:35
ロシア軍の息切れ
大矢 実
日本国際フォーラム研究員
ロシアによるウクライナ侵略は3ヶ月に及ぼうとしている。一時はウクライナ首都のキーフにまで迫ったロシア軍も、西側諸国によるウクライナへの武器支援の結果として、当初の作戦目標の達成は諦め、部隊の再配置と言う名のウクライナ各地からの撤退を強いられている。また、ロシア本国への西側諸国による強力な経済制裁により、ロシアの防衛産業は大きな打撃を受けたと思われ、それ自体がロシア本土の前線への兵器供給力に大きな影を落としているという声もある。
開戦劈頭、電撃的に首都を攻略し「ネオナチ政権」を打倒するという青写真を実現するためにロシア軍は精密誘導兵器などの最先端のハイテク装備でピンポイント爆撃などをしていたが、いまは一部の攻撃は無差別攻撃の様相を呈し、多くの非戦闘員、無辜のウクライナ市民に被害が出ている。
緒戦でも民間人に被害を出していたこともあり、これをロシア軍の残虐性の発露と見る向きもあるが、ここにきてロシアが旧ソ連の前時代的装備を使っている結果として市民に被害が出ているという側面も多くある可能性が出ている。『UKRINFORM』が12日に報じたところによると1950年代から1960年代に生産された自走榴弾砲などが前線に配備されはじめるなどロシア軍のなかに最新兵器の恩恵を受けられない部隊が出てきているようだ。
ここで教訓になるのは、軍事大国ロシアがウクライナという小国相手に3ヶ月戦っただけで兵站に支障が出て早々にロシア軍の攻勢限界が見えつつある状況になるとともに、自慢のハイテク最新兵器が活躍できなくなったということだ。振り返って、日本においては、食糧や弾薬、薬品などの備蓄の不足や保管場所の偏りによる自衛隊の継戦能力の不安に対する懸念は以前から指摘され続けている。日本の防衛が、全面的に「アメリカ軍が来援するまで敵軍の攻勢を耐えきる」ことに賭かっていることを踏まえれば、当初の予想と大きく異なるロシア軍の状況や、大出血しながらも西側による大量輸血を受けながら戦い続けることができているウクライナ軍は明日の我が身である。
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