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2007-10-23 20:34
道理に欠ける民主党の洋上給油反対
内田忠男
名古屋外国語大学教授
海上自衛隊によるインド洋上での給油活動を継続するための法案の、今臨時国会での成立が絶望的になった。4年前に給油量を間違って発表したうえ、その間違いを海自が隠蔽していたことが発覚したのに加えて、守屋武昌・前防衛事務次官が特定業者からゴルフなどの接待を受けていた疑惑が明るみに出た。民主党など野党は、これら疑惑を解明するのが先決として、当面、法案審議に応じない構えを示しているからだ。
海自による洋上給油は、現行テロ対策特別措置法が期限切れを迎える11月1日に、いったん中断せざるを得ない情勢になっていたが、新法案の成立が大幅に遅れることで、再開のメドも立たなくなった。他の野党はともかく、民主党がこの洋上給油に反対する本当の意味が分からない。小沢一郎代表が「ISAFに参加すべき」と主張するに及んでは、益々意味が判らない。
ごく普通の考え方に立てば、国際テロの防圧が国際社会共通の課題になっている今日の状況下で、多国籍の海軍艦船による海上防止活動を支援する洋上の補給活動は、憲法などの制約を抱える我が国にとって一番身の丈に合った行動と言える。
補給艦に護衛艦が随伴しているとは言え、これが戦闘に巻き込まれる可能性は万に一つ、あるかないかだ。治安維持が主任務であるISAFに参加すれば、仮に民生支援であれ、戦闘への参加を余儀なくされる可能性は、はるかに高い。小沢氏はISAFが「安保理決議で明確に規定されている」とし、洋上給油には安保理決議の裏付けがないと言うが、幅広に考えれば、海上防止活動に安保理の意志が投影しているとするのに、それほど大きな無理があるとは言えない。
参院選を迎えるに当たって自民党との違いを際立たせる方便として、洋上給油への反対を言い出した、と言うのが民主党の本音ではなかったか。いずれにせよ、自民党とは山ほどある内政上の懸案でじっくり対決すべきであって、我が国が国際社会の要求に応えようとする施策に反対し、徒に国の威信を傷つけるべきではない。外交政策で倒閣を目指すなら、もっと本質的かつ死活的な利害のからんだイシューで渡り合うのがスジと言うものである。
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