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2022-10-19 16:35
上海協力機構(SCO)とBRICSが協力して西洋諸国の優位を崩す
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
ウクライナ戦争勃発後、アメリカを中心とする西側諸国(the West)は対ロシア制裁を発動した。具体的には国際金融、決済からロシアを締め出すというものだった。ロシアが輸出する石油や天然ガスの支払い手段であるドルが使えなければ、ロシアは経済的に追い詰められ、戦費負担も併せて、ロシアは戦争継続が困難になるというのが西側諸国の見立てだった。ロシアがドルを受け取れなければロシアは経済的に追い詰められギヴアップするという見込みだった。
しかし、ロシアに対する制裁には西側以外の国々(the Rest)は参加しなかった。中国やインドにはロシアから割安の石油や天然資源を手に入れることができるようになった。それでは取引ではどの通貨を使っているのかということになる。それは人民元とロシアのルーブルである。その枠組みとなっているのは上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization、SCO)だ。
上海協力機構は、1996年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの首脳会合が開催されたことが端緒である。これを上海ファイヴと呼ぶ。2001年にウズベキスタンが参加して発足したのが上海協力機構である。2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロもあり、この枠組みは安全保障分野のものであると考えられていた。それから約20年が経ち、上海協力機構はユーラシア大陸を網羅する国際的な枠組みに成長した。上海協力機構の構成は以下の通りだ。
正式加盟国は、中華人民共和国、ロシア、カザフスタン、タジキスタン、キルギス(以上が上海ファイヴ)、ウズベキスタン(2001年に加盟)、インド(2017年に加盟)、パキスタン(2017年)(2)オブザーヴァーは、イラン(2023年から正式加盟が決定)、モンゴル(2005年にオブザーヴァー参加)、ベラルーシ(2015年にオブザーヴァー参加)、アフガニスタン(2012年におブザーヴァー参加)、(3)対話パートナーは、スリランカ(2009年に対話パートナー参加)、トルコ(2012年に対話パートナー参加)、アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、エジプト、カタール、サウジアラビア、(4)対話パートナー参加予定国は、アラブ首長国連邦、ミャンマー、クウェート、モルディヴ、バーレーン、(5)参加申請国は、バングラデシュ、イスラエル、シリア、イラク、(6)客員参加は、トルクメニスタン、独立国家共同体、東南アジア諸国連合となっている。
このユーラシアを網羅する国際的枠組みに、BRICSのブラジルと南アフリカという資源大国が加わって、中国の人民元を基軸とする国際決済システムを構成すれば、ドルの国際決済システムにおける基軸通貨という地位は脅かされる。ドルの力を使って世界中の国々を従わせるという構造が崩れることになる。そのような状況がすぐに現実化するとは考えにくいが、10年、20年の単位でこのようなことが起きるということも頭に入れておかねばならない。
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