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2007-10-31 10:57

アフリカ外交への取り組み急げ

鍋嶋敬三  評論家
 日本の対アフリカ外交の檜舞台である第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)が2008年5月、東京で開催されるが、ホスト役の福田康夫首相の顔が見えない。所信表明演説では「アフリカ」の一言もなかった。首相就任に当たってG8主要国や中国、韓国の首脳とは電話会談したが、アフリカの国とはなかった。人口200万人のナミビアの大統領を10月中旬、福田内閣として初めて元首として迎えたのが唯一の実績である。内閣発足直後からテロ対策新法や防衛省の疑惑の対応に追われてアフリカどころではないというのが本当のところだろう。来年春の予算成立後の衆院解散・総選挙の憶測も出る中で、7月の北海道・洞爺湖サミットとも連動するアフリカ外交戦略のかじ取りは大丈夫だろうか。

 TICADは冷戦後、国際社会のアフリカへの関心が薄まる中、日本政府が主導して1993年に東京での第1回を皮切りに5年ごとに開催、貧困削減のためのアフリカ諸国の自助努力(オーナーシップ)と国際社会とのパートナーシップの重要性を訴えてきた。2001年に世界で1日1ドル未満の生活をする人の割合は東アジアが16%だったのに対して、アフリカは46%に達した。国連ミレニアム開発目標(MDGs)では2015年までに貧困層の50%削減する計画だが、道のりは遠い。

 TICAD Ⅳは(1)成長の加速化(2)人間の安全保障の確立、(3)環境・気候変動問題への取り組み――を重点に掲げている。具体化には先進国とアフリカ自身の努力が必要だ。6月のG8主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)では、温室効果ガスの排出量を2015年までに半減することを真剣に検討する、という日本などの提案が議長総括に盛り込まれ、サミットの目玉として大きく報道されたが、もう一つの柱であったアフリカ問題はかすんでしまった。

 G8では「アフリカにおける成長と責任」のテーマで、平和と安全への取り組み、経済成長と投資の促進、自発的な統治改革、保健システムの改善などに詳細に言及、エイズ、マラリア、結核との闘いに数年間に600億ドルを提供すると約束したのである。これを受けた形で開かれるTICAD Ⅳは「国際社会の知恵と資金を結集する」との目標を立てており、主導的役割を期待される日本の力量が問われる。

 アフリカに対して中国はこの数年、援助を武器になりふり構わぬ資源外交を展開している。これに対して国連安保理常任理事国入りを目指した日本は、国連加盟国の4分の1以上の53カ国を擁するアフリカ連合(AU)の支持の一本化を取り付けられず、戦略的敗北を喫した。「アジアの奇跡をアフリカの奇跡にしたい」というアフリカの願望は強い。日本はそれを手助けする経験も技術も資金もあるはずである。福田首相が対アフリカ外交をどう立て直すのか、TICAD Ⅳが試金石になる。
                           
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