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2023-02-28 11:53
平和外交だけで日本を守れるか
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
自由民主党岸田文雄政権は、国際法違反のロシアによるウクライナ侵略の脅威をはじめ、中国による台湾への軍事的圧力の増大や常態化した尖閣諸島への領海侵犯を含む力による現状変更の試み、北朝鮮による核開発や度重なる軍事的挑発など、日本を取り巻く厳しい安全保障環境に対処するため、昨年12月16日に国家安全保障戦略などの「安保3文書」を閣議決定した。そして、ミサイル防衛の困難性から敵のミサイル発射基地などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有や、防衛費倍増を決定した。さらに、今年1月14日の日米首脳会談では、上記「反撃能力」保有等を踏まえ、中国・北朝鮮・ロシアの専制主義国家による脅威に対して日米同盟の抑止力と対処力を強化することで一致した。
これに対し、日本共産党や、一部のマスコミ、市民団体、左翼系学者、日本弁護士連合会などは、「反撃能力」保有と防衛費倍増について、「憲法9条の専守防衛をかなぐり捨て、軍事大国を目指す危険な戦争への道であり国を亡ぼす暴挙である」などと激しく反対し、閣議決定の撤回を求めている。
このような「反撃能力」保有や防衛費倍増への反対論の根底には、自衛隊や日米同盟による抑止力を認めず、これに反対する左翼イデオロギーがある。とりわけ、日本共産党は党綱領において、「自衛隊違憲解消」と「日米安保条約廃棄」を明記し「非武装中立政策」を取っている。そして、これらの反対論に共通するのは、軍事対軍事の悪循環に陥る戦争への危険な道であるとして、「反撃能力」保有など日本の抑止力強化には断固として反対し、何よりも憲法9条の平和外交に基づき話し合いで解決すべきと主張する点である。
しかし、抑止力を否定し、すべてを平和外交だけで解決できれば、古今東西を問わず、世界各国が常備軍を持つ理由を説明できず、ロシアによるウクライナ侵略もない。そして、反対論者が金科玉条とする、日本を守る「専守防衛」も、実は日本国内における米軍基地と米国からの「核の傘」の借用による抑止力の存在を大前提としているのである。反対論者は、これらの抑止力によってこそ、日本を守る「専守防衛」が持続可能である厳然たる事実を見て見ぬふりをしているのである。もちろん、そのために日本は米国に対して基地提供の負担や思いやり予算等の重い代償を払っている。
このように、日本を守る「専守防衛」自体が日米同盟による抑止力の存在を大前提とするのであり、この抑止力がなくなれば、反対論者が金科玉条とする、日本を守る「専守防衛」自体も成り立たないのである。このことからも、自衛隊や日米同盟の抑止力を否定した平和外交だけでは到底日本を守れないことは明らかである。今回の岸田政権による「反撃能力」保有と防衛費倍増は、日米同盟の抑止力を補強し日本の平和外交を補完することによって、反対論者が金科玉条とする、日本を守る「専守防衛」を持続可能とするものと言えよう。
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