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2023-06-10 11:20
中国国内ではすでに「戦争準備」が進んでいる
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
中国は、今までは「一党独裁」として共産党の上層部の合議制によって物事が決まっていた。そのことは、常務委員会で物事が決済され、その常務委員会の派閥などが様々な意味で重要視されれいた。しかし、本年の全人代で人事が変わってから、基本的には、常務委員会も中央政治局の局員も、つまり共産党の意思決定機関のすべてが、習近平に対する「イエスマン」しかいなくなってしまったということになっている。基本的に、習近平の施政の10年間、「反腐敗」ということで、多くの有力政治家がいなくなった。この中には、習近平に反対する人々も数多くあったし、また人民解放軍に対して影響力のある人も少なくなかった。しかし、それらの人々がほとんどいなくなってしまうということは、そのことに酔って、各組織に対する習近平の影響力が増すということを意味している。この「反腐敗」というのは非常に面白い。良く考えたものである。私のように中国において4年間仕事をしていた人にとっては、中国の政府は市政府の端に至るまで全て全てが腐敗していた。基本的にはトイレに入るのに少額であったが賄賂(チップ)が必要という事になっていたほどである。そのような状況で「反腐敗」ということをやれば、全ての共産党の人々が全て「処罰対象」になるのである。その中で処罰される人と処罰されない人を選ぶのは、基本的には「習近平の一存」である。ということは。対立する人は全て失脚し、また、残された人は習近平に処罰されなかった「恩」と、同時にいつ処罰されるかわからない「弱み」を持つことになる。その中で、力を発揮する人が、全て「習近平に忠誠を誓う」ということになるのであるから、それは大きな内容になるのではないか。そのような中で「戦争準備」がどのようになされるのかということが非常に大きな興味になるのである。
中国共産党に関しては、「反腐敗」を10年行ったことによって、習近平国家主席による「個人独裁」担ったということになる。ある意味で「共産党の合議制」の形式を取りながらも、反対する人もなく、また、反対した場合は排除される組織になった。つまりは、故人の独裁になったということになる。このやり方はナチスドイツのヒトラーのやり方に酷似している。左翼の人々をして最も民主的であると評されたワイマール憲法の下において、その議会で、トップの為政者に対して反対する人が全くいなくなった状況になると、基本的には会議体が機能しなくなり、そのまま個人の独裁になる。全ての議会が形骸化し、故人の独裁が始まるのである。これは、北朝鮮の現在の政治体制も同じであるしまた、ヒトラーも同じ状況になった。ヒトラーの場合は大統領と首相が別々にあり、なおかつ議会がそれを監視することになったが、コク門の圧倒的な支持によって議会が全て首相であるヒトラーを肯定する形になり、また、大統領を兼務することによって、権力が一人に集中することになる。そのうえで、議会の権限をすべて首相に委任する「全権委任法」が成立することによって、ヒトラーの独裁になるのである。
さて、そのヒトラーの独裁になると、軍事的な準備や、国内の言論の統制、または戦争の意思決定などもすべてヒトラーの指示によって行われる。それも直接的な指示ではなく、ある程度の方向性の指示があり、それを周辺が「忖度」した形で物事が進む。特に、「恩」と「弱み」がある「権力者」は、自らの権力を維持するために、進んで習近平の意思を忖度し、そのうえで、その半歩先を進んだ結果を残そうと苦慮するようになるのである。しかし、それらの指示が、現場では「実質的な戦争命令」というようなかたちで解釈される。少なくとも、敵の目前で軍事訓練を行うなどの事があれば、その内容がいつの間にか「忖度」があり、そこで「疑惑の銃弾」が生まれる。このようなときには、基本的には陸軍が最も先に戦争が始まる。陸軍というのは、攻撃命令などがしっかりしているが、銃を撃つのは全て最前線の兵である。つまり、敵に銃口を向けて引き金を引くのは、だれでもできてしまう。これに対して海軍は、艦橋で命令が無ければ大砲に弾を込めることも基本的にはできないし、空軍はそもそも発着許可がなければ飛行機は飛び立てない。現在まで台湾と中国が戦争が起きていないのは、全てが空軍か海軍によって成立していることであり、上官の命令がなければ、戦争がはじまらない状況であるからであり、旧帝国日本軍の盧溝橋事件のような状況は存在しないということになるので会う。
それでも、いつ何が起きるかわからない。そのような中でその「独裁者」である習近平は、「最悪のシナリオ」を想定しつつ「荒れる海」への備えを進めるよう呼び掛けた。中国共産党は複数の取り組みを強化し、認識されるあらゆる内的及び外的脅威に対抗しようとしている。つまりは、「戦争を準備せよ」ということを言っているのだ。この会議が「実質的な戦争準備」ということになり、今後は「アメリカ側の挑発に乗る可能性がある」ということを意味している。これは中国の人民解放軍の戦争準備がある程度目途がつき、戦争準備が最終段階に入ったということを意味していると解釈できるのである。さて、日本は今頃になって防衛費の増額の財源問題を言っている。実際にそれで何とかなるのであろうか。
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