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2023-06-14 12:21
LGBT理解増進法について
船田 元
衆議院議員
LGBT理解増進法、正確に言うと「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」が、この国会で成立する運びとなった。この法律の元になったLGBT法は、2021年に超党派の議員連盟で作成され、差別の禁止をメインとした法案だったが、自民党の中の強硬な反対に遭い、国会提出が見送られた。
今回の法案はこれを修正し、理解増進に重きを置く法案であり、自民、公明、日本維新、国民民主、各党の提案・賛成によるものだ。性的指向や性同一性をめぐって差別をしないことは言うまでもないが、その前にLGBTの存在を理解していこうと言う前提が強調されている。一方野党案はかつての差別禁止法に近いものである。理解増進法案は国会提出後も、自民党内や他党との交渉の過程で修正が行われた。当初は「性同一性」が「性自認」だったが、後者は当事者の主観で決められることとなり、第三者の関与が少しでも取り入れられる可能性のある「性同一性」に置き換えられた。また当初は「差別は許されない」と強い表現だったが、その後「不当な差別はあってはならない」と、表現が少し柔らかくなった。
さらに土壇場になって、より多くの政党の賛同を得るために、性同一性と性自認のいずれの訳語にもなる「ジェンダー・アイデンティティ」と言う横文字を「性同一性」の替わりに据え、ようやく最終形が出来上がった。いずれの言葉にも解釈できると言う、国会お得意の玉虫色の決着であり、私としては少々不満が残る。今回のLGBT理解増進法案は、伝統を重んじる保守の人々からは、日本の古き良き伝統・文化、そして家族制度が崩壊すると手厳しく批判されている。しかし先進国の多くは性的マイノリティに対する何らかの差別禁止制度を設けており、世界の潮流といっても過言ではない。パートナーシップ制度も、多くの自治体に急速に普及している。したがって私はこの法案に賛成するつもりである。
しかしながら実務的には、懸念があることも否めない。「ジェンダー・アイデンティティ」を性自認に近く解釈された場合、100%男性が自ら「女性」と宣言し、堂々と女子用トイレや更衣室、女性風呂などに侵入してしまうなど、深刻なトラブルが起きる危険である。これらのトラブルに適切に対応する、あるいはトラブルを未然に防ぐ手立てがなければ、この法律の信頼性も実効性もなくなるし、理解増進どころではなくなる。しっかりとした防止策を作らなければならない。
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