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2023-09-30 12:00
在日米軍基地は日本防衛の「生命線」
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
日本は米国と日米安全保障条約を締結している。安保条約の目的は、日本を含む極東における国際の平和と安全の維持である(安保条約前文)。そして、安保条約5条では、日本に対する武力攻撃に対しては、自衛隊と米軍の日米両国で対処することが明記されている。日米安保は、基本的には北大西洋条約機構(NATO)と同様の国連憲章51条に基づく集団的自衛権として、自衛隊と米軍の日米両国の「共同防衛」システムであり、これにより日米両国は軍事的同盟関係にあることが明らかである。日本国の安全と極東における国際の平和と安全の維持に寄与するため、在日米軍基地が置かれている(安保条約6条)。在日米軍基地の規模は、米国陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊を含め約5万人である。在日米軍基地は、三沢、横田、厚木、横須賀、岩国、佐世保、嘉手納、普天間に置かれている。
5万人規模の在日米軍基地を日本に置く米国の目的は、日本を含む極東アジアにおける国際の平和と安全を維持するための、米国の軍事的支配の確立である。同様に、韓国や、ドイツなどNATO諸国にも設置されている米軍基地も、当該国を含む地域の平和と安全を維持するための、米国の軍事的支配の確立が目的である。これらの米国の軍事的支配の確立は、米国の世界における圧倒的な軍事的覇権と軍事的影響力の保持を可能とするものである。日本を母港とする米第7艦隊、三沢・横田・岩国・嘉手納・普天間米空軍基地、厚木・横須賀・佐世保米海軍基地など、陸、海、空軍、海兵隊等からなる約5万人の在日米軍基地の打撃力、抑止力は極めて強力である。日本の周辺国である中国、北朝鮮、ロシアもこれを認めざるを得ない。通常兵器はもちろんのこと、核兵器についても米国の「拡大核抑止」(核の傘)の有効性を否定する周辺国は存在しない。すなわち、万一、周辺国が日本に対して核攻撃をすれば米国による核反撃の可能性を周辺国は否定できないのである。その意味で「核の傘」は日本に対する核抑止として有効性を有すると言えよう。
中国習近平国家主席は台湾武力統一の可能性を否定しない。しかし、不動産バブル崩壊など中国の経済が変調をきたし、今後高度成長が期待できないとなれば、国力を消耗する「台湾武力統一」はより慎重となろう。しかし、仮に、中国による台湾武力侵攻があったとしても、米軍の介入を中国は最も恐れるから、中国による在日米軍基地を含む日本への攻撃は抑止されよう。なぜなら、在日米軍基地を攻撃し、米軍に犠牲者が出た場合は、米国世論がこれを許さず、中国への反撃を行う可能性が高まるからである。仮に在日米軍基地を避けて、尖閣を含め日本への攻撃がされた場合でも、日米同盟の信頼関係が緊密であれば、米国による反撃の可能性は高いと言えよう。したがって、いずれにしても、日米同盟に基づく在日米軍基地の抑止力としての重要性は極めて大きく、日本防衛にとって在日米軍基地は「生命線」と言っても過言ではない。在日米軍基地の重要性はそれが全廃されたときに再確認されるであろう。
日本共産党は、在日米軍基地は日本防衛とは無縁の地球規模の侵略干渉部隊であると規定しその全廃を主張するが(赤旗2023年9月30日)、これは日本防衛を定めた上記安保条約5条を故意に無視するものであり、在日米軍基地が日本の極めて重要な抑止力であることは、何よりも周辺国である中国、北朝鮮、ロシア自身が暗黙に認めているのである。また、覇権主義に基づき、台湾、尖閣、沖縄を含め西太平洋への海洋進出を狙う中国の危険性を考えると、軟弱地盤等を理由に、地政学的に極めて重要な位置にある沖縄県辺野古基地移設工事に絶対反対し、法治国家である日本国最高裁判所確定判決にも従わない沖縄県知事の数々の反政府行動は、中国を利し、日米同盟関係を不安定化させるものであるから、日本の安全保障上極めて危険である。
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