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2024-01-01 23:12
破壊抑制への急を要するイスラエル問題
佐々木 卓也
会社員
2023年10月7日、イスラム系過激派組織ハマスがイスラエルに侵入し民間人を殺傷し、拉致したことで世界の平和問題が、悪しき状態へと深刻化することになった。なぜらばその報復としてイスラエル軍が、激しく爆撃を繰り返しガザ地区での死者は1万人を超えたことに加え、反イスラエル国をパレスチナ問題に関与させることになったからだ。そしてその問題を考察していく上で、イスラエルの歴史を振り返る必要がある。先ずはイスラエルが、1948年に建国される前から紛争の原因があったことを、知らなければならない。それはイギリスが行った外交で1914年の第一次世界大戦後にフセイン=マクマホン協定を結び、サイクス=ピコ協定をも結びバルフォア宣言を出した行為だ。
これにより、アラブ人とユダヤ人とフランス・ロシアの間に土地をめぐる矛盾が起き、パレスチナ問題へと発展した。そして1918年に第一次世界大戦が終結しても、ユダヤ人がパレスチナへ入植したため、傍観する欧米諸国をよそにアラブ人との対立が始まったのだ。また1930年代にはナチス=ドイツから逃れるために、パレスチナを目指すユダヤ人は増加していった。その後1945年に第二次世界大戦が終結し、1948年ユダヤ人はイスラエルの建国を宣言するが、元々パレスチナに暮らしていたアラブ人の反発でアラブ諸国を巻き込む紛争になった。その結果として、4度にわたる中東戦争が勃発したのだ。
1948から1949年の第一次中東戦争で、イスラエルはアラブ諸国に勝利し、独立を確かなものとして、占領地は領土として国際的に認められた。1956から1957年の第二次中東戦争では、イスラエルにエジプトが勝利して、スエズ運河を手中に収めた。1967年の第三次中東戦争は、イスラエルがアラブ諸国に勝利し、シナイ半島などの領地を獲得した。またアラブの民主主義が衰退して、イスラム原理主義勢力が拡大していった。1973年の第4次中東戦争では、イスラエルがアメリカの支援を受け軍事的には勝利したが、国際連合の仲裁を要する内容で第一次オイル=ショックをもたらした。
この歴史的事実により、イスラエルが内戦状態になればアラブ諸国の中には、イスラエルの衰退を傍観するような立場をとる国がなくなることはないだろう。その後1993年の「オスロ合意」は完全な合意に至らず、1995年にはイスラエルのラビン首相が、和平反対派の青年に暗殺された。結局その合意はイスラエルとパレスチナ解放機構の双方にとって形骸化した。
そして2002年にアラブ首脳会議において採択された「アラブ平和イニシアティブ」は2007年にアラブ連盟首脳会議で再確認された。しかし、イスラエルに対する東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の建設の承認などの条件は、現実性がなく和平交渉が進展することも失敗に終わった。またそのような、アラブ諸国のイスラエルに対する和平案は紛争当事国の実情を理解できていない、理想だけの考えが当てはめられる。そのために何度提示されても効果が出ないように思える。
その後もイスラエルとパレスチナの問題は解決することなく、やっと国連が関与したのは2023年10月下旬、人道目的での休戦を求める決議案を採択するということであった。だがイスラエル軍が11月4日には、ガザ市を南北から攻撃し市街地に入ったことも明らかになった。そして国連は11月15日に、緊急かつ延長された人道的な戦闘の一時休止と人質の即時解放を求める決議を採択した。それからイスラエル軍は、ガザ北部の住民に南部に避難するよう通告したものの11月17日には、ハマスが存在すればガザ南部でも進軍することを表明した。
そのように国連の、イスラエルへの対応は効力を十分発揮しないまま、戦闘と休戦が繰り返され人質の解放が遅れている。そして戦争が長引けば、イスラエルでは軍がハマスを壊滅させようとして予備役を招集する。そのために会社員が引き抜かれ人員不足により、企業の経済活動は生産性が落ち込むことになっていく。また12月20日に発表された、10月7日以降の戦闘によるパレスチナのガザ側の死者は2万人を超えたが、パレスチナの死者、負傷者、避難民はさらに増加していくのだ。
そうした中で、2回目となる一時的な戦闘の休止案の協議が続いているが、その休止が現実となっても戦闘再開時に、イスラエルの攻撃が激化する恐れもある。それを避けるにはカタールとエジプトの仲介による、休止後の和平協議数を増やさなければならない。またそれと並行してイエメンの反イスラエル武装組織フーシ派の、紅海のイエメン沖での攻撃を防ぐ必要があるのだ。ではそんな状況でカタールとエジプト以外にどの国が、和平に貢献できるのかといえばアメリカによる、イスラエルの攻撃鎮静化の促進とフーシ派の海上テロ行為に対する抑制が考えられる。だがアメリカが早急に、そのことを実行し結果を出さなければ他国に頼るしかない。
それにはヨーロッパ諸国による、問題解決への関与が求められる。そして現状は欧州連合加盟国の政府が、一体となってイスラエルを支持しているのだ。そのことを前提としてもフランスは、中国と経済協力を強化しているため、中国のイランへ影響力を軍事面でも活用できる可能性を持っている。イギリスでは、10月14日にパレスチナを支持する大規模なデモが起きた。その後スナク首相の、ガザへの経済支援が表明され今後も、人道支援が期待できる。ドイツはショルツ首相が、「イスラエルとその国民の安全はドイツの『国是』だ」と発言している。だが11月4日には、イスラエル寄りの政府に対して停戦を呼びかけるよう求める、デモが起きている。その力が増加し、政府の方針を多少変えることができれば、ドイツ政府はイスラエルが民間人を犠牲にすることを回避するように促す可能性を持つ。また同時に、フランスのように中国と経済協力をしているため、中東安定に向けて中国に働きかけることもできる。
一方南アフリカ政府は12月29日に、イスラエルの軍事侵攻を「集団殺害」として国際司法裁判所に提訴し、イスラエル軍に侵攻停止を命じる暫定措置も求めた。国連の各機関が、機能するのに遅れている中でヨーロッパ諸国が積極的に、イスラエルとパレスチナの双方の避難民と人質に対する安全を求め、行動を起こす必要が迫っている。そして2024年に持ち越してしまったイスラエル問題は、第五次中東戦争を回避するため、ヨーロッパ諸国を含め全世界で取り組むべき出来事でもあるのだ。
12月29日イスラエルのミサイル攻撃で、瓦礫と化した建物を離れ、ガザ最南部のラファに10万人以上の避難民が、新たに到着していると発表されている。民間人と避難民を守るためには、ガザを更に南下したエジプトに避難所を設ける必要があるだろう。事態が悪化し続けている今、歴史を振り返り根源的な問題に向かう時がきている。国連の採決を待っていては、とりわけ西側に向けられた大砲の位置は変えられない。
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