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2007-11-23 09:18
首相は問責決議を無視せよ
杉浦正章
政治評論家
党首会談の決裂を受け政局は緊迫の度を深めており、参院における首相問責決議案が可決されれば衆院解散もささやかれている。しかし、事態を冷静に見れば、首相は何ら憲法上の根拠がない問責決議に、まともに解散・総選挙で対応する必要はない。無視すればよいのである。無視して早期に国会を終えることが、来年度予算案の審議という重要な時期に政治空白を作らずにすみ、民主党も内心ほっとする一石二鳥の策だ。参院はまるで「不要院」化するがやむを得ない。党首会談という〝手順〟が済んで政府与党は、来月15日で終了する国会を一カ月程度延長する腹を固めた。憲法の規定で新テロ法案が否決とみなされる60日ルールを念頭に、衆院での同法案再可決を目指す構えである。
再可決した場合、おそらく民主党は振り上げた拳を下ろせず、首相問責決議案を参院に提出、可決するだろう。その後の政治が展開するパターンは二つある。一つは参院での問責決議の可決を受けて衆院の解散・総選挙に突入する。もう一つは首相が問責決議を無視して、早期に国会を閉じ、クーリング期間を経て、リセットして通常国会を開会する方法だ。首相問責決議は一事不再議の原則に基づき、通常国会では審議の対象にならない。問責決議は憲法上法的効果が生じないのになぜ衆院の解散かと言うと、それは実体的に参院が動かなくなってしまえば、首相がその〝政治責任〟を問われるからだとされている。
しかし、国会がある度に野党が参院で首相問責決議案を可決して、首相が衆院を解散をしていたらどうなるか。国政はマヒし、国会は機能しなくなる。悪循環に陥るのである。だから「ねじれ国会」という憲法が想定し切れていない政治状況下においては、民主党は参院の問責決議案提出にはよほど慎重にならねばならない。かっての社会党のようになんでも反対政党になってしまった今の民主党では無理だろうが。折りから景気の先行きも懸念材料が山積しつつあり、この重要な時期に総選挙で一月から三月までの政治空白が許されるだろうか。したがって、福田首相は問責決議を、解散してまで対処するほど重要問題視する必要はない。首相自身の心境もおそらく一月解散には消極的であろう。しかし弾みで解散という事態もあり得ると思っているのだろう。
一方で民主党も、小沢一郎代表自身が言っているように、衆院を解散に追い込んで勝てる自信はない。むしろ「ねじれ」の継続の可能性が強い。民主党は振り上げたこぶしをどうするか逆に迫られるだろう。したがって首相は、日本の政治に悪例を残さないためにも、問責決議が可決されたらこれを無視すればよいのである。無視後の国会の混乱を避けるには、会期延長幅をぎりぎりに設定し、すぐに閉会すればよい。民主党は怒ったふりをすればよい。今何が問われているかの大局を見据えれば、どの道の選択が賢明かが分かってくる。
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