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2024-07-18 12:54
中国の教育問題に注目が集まっている
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
高校入試や大学入試に嫌な思い出がある人は多いだろう。もしかしたら、小学校入試、中学校入試から試験を経験している人もいるだろう。日本の試験地獄は「良い会社に入るためには良い大学に行かねばならない、良い大学に入るためには良い高校に入らねばならない」ということが基本にある。良い会社とは有名な会社で、給料が良くて、潰れなくい会社のことであり、良い大学とは世間の評価が高く、入学で高い成績が求められる学校のことだ。東アジア各国はこうした受験地獄の傾向が強く、日本でも、中国や韓国の大学入試がいかに大変かということが報道されている。
「良い会社に入るために、良い大学に」という受験戦争は日本では戦後に加熱したものと私は考える。戦前は上級学校、高等教育を受けるためには上流階級に生まれることが前提で、国民の大多数(過半数が農民)にとっては、あまり意味のないことだった。時たま、神童と呼ばれるくらいに頭の良い子供が、地域の地主の助けを受けて進学するということはあったようだが、基本的には全員が上級学校に行けるわけではないという階級社会を前提にした諦めがあった。戦後、日本の高度経済成長に伴う、産業社会の到来と中間階級の誕生で、「誰でも勉強して試験に突破すれば大学に行って良い会社に入って良い生活ができる」ということになった。そのために、結果として受験戦争が過熱することになった。進学校に進み、大学に行くことができる、活かせることができる過程が増えた、そうすれば良い生活ができるということになった。また、戦後のベイビーブームで子供たち(1940年代後半から50年代前半生まれ)の数が多かったのも競争に拍車がかかった。そして、ベイビーブームの子供たちの世代(1970年代生まれ)もまた加熱する受験戦争を戦った。
そうして、偏差値輪切り教育が行われ、大学入試に向けた教育を行う普通科高校の人気が上がる一方で(進学実績が高ければ高いほど人気で偏差値が高くなる)、大学入試に向けた勉強は少なく、専門的な勉強を行う、職業高校、商業高校や工業高校の人気は下がっていった。現在では大学への推薦入学も多く、資格も勉強しやすいという面もあり、職業高校の人気も上がっているそうだ。しかし、正直に言って、私が中学生くらいの頃は、そうではなかった。更に言えば、昔であれば、「刻苦勉励して、苦学して東大に」という美談がそこかしこで聞かれた。教育が社会的流動性を高めた。今では東大の入学者の家庭環境は裕福で、裕福であるから子供の教育にお金をかけられるから、東大に入学できる。教育が社会的流動性を促進する機能を失いつつある。
こうした状況は中国でも似たようなものであるようだ。中国でも進学用の普通科高校と職業高校に分かれていて、大学進学熱の高さもあって高校入試も過熱しているようだ。今回、中国国内の数学コンテストで、職業高校の女子学生が上位12位に入るという快挙を達成し(上位30名に女性はこの学生だけ)、中国国内の教育制度が抱える問題に注目が集まっているようだ。それは、日本と同じく、社会的流動性を促進する機能を失っているということのようだ。金持ちは子供に多くのお金をかけて勉強させて、大学に行かせる。貧乏な家庭の子供は学校の勉強だけでは勝てないので、大学に行けないということになっているようだ。経済成長して、中間層が増えると、子供の教育問題が大きくなるというのはどこも同じようだ。
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