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2024-07-08 13:12
平安時代でないのに黒魔術で逮捕されるモルディブ
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
AFPの6月27日の報道によると、インド洋の島国モルディブの当局は6月27日、 同国の環境・気候変動・エネルギー省のファティマス・シャムナズ・アリ・サリーム(Fathimath Shamnaz Ali Saleem)副大臣について、モハメド・ムイズ(Mohamed Muizzu)大統領に「黒魔術」をかけた容疑で逮捕したと発表した、とのことである。モルディブだけではなく、イランやイラクなど、イスラム法を適用している国々では、実は黒魔術や呪術に対する罰則がかなりある。実際にイスラム原理主義を考えれば、西暦600年代の文化や科学水準で物事を考えるということになるので、当然に呪術や魔術が存在していてもおかしくはない。もっと単純に、神の存在を信じているということは、そのまま呪術そのものなど神秘性が高く科学的実証性がないものに対する実効性の内容が法執行の中に含まれるということになる。
そのようなことでいえば、イスラム法があるモルディブで「黒魔術」が「犯罪の構成要件」をなしていたとしてもおかしくはない。ちなみに、今回の環境副大臣は、黒魔術を行ったということで最高刑は禁固6か月であるということである。もう一つ「ちなみに」ということを言えば、2013年、2018年にそれぞれ、大統領選挙を妨害した、または大統領候補を黒魔術によって呪い殺そうとしたという罪で、モルディブではそれぞれ複数人の逮捕者を出しているということになる。そのような意味では、「黒魔術で逮捕」というのは、モルディブの人々の間ではそれほどおかしな話題ではなく、その対象が副大臣であったということがおかしいだけであるということになる。
さて、日本では呪術による逮捕というのは存在しない。もちろん、平安時代や鎌倉時代くらいまでは呪術による逮捕が存在し、その呪術内容は、権力者の近くで権力者を乗ろうということになる。実際に「権力者を呪っている」という時点で、反権力であることは明らかであることから、それを「実行行為になる前に」罰するということを意味している。呪術によって本会を成し遂げようということは、逆に言えば、実行行為では対抗できないということを意味しており、その実行行為で対抗できない程勢力が小さいうちに反乱の芽を摘むという意味では、ある意味で合理的であったということになろう。
さて、モルディブに話題を戻そう。モルディブでは、「中国派」と「インド派」で政治的な対立があり現在の大統領は中国派である。しかし、中国の侵入を許し中国のための資金や軍事的ンプレゼンスを高めるということになれば、モルディブの環境は悪化し、その意味では環境副大臣としては「自分の仕事を邪魔する存在を引き入れる大統領」ということになろう。しかし、経済的に依存性が高い状況では、大統領に対抗し得ない。そのような意味で呪術による解決を図ったという事であろう。呪ロ魔術そのものは関係がないにして、実際には、「中国派との対立」や「中国における経済的進出」というようなことが、そこまで深刻になっているが、同時に乗るディブでは反中国派があまり力を発揮できない環境にあるということにもつながる。単純に黒魔術ばかりに目を行くのではなく、このような事件から、様々な内容を見てゆかなければならないということになる。
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