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2007-12-04 21:37
「詰め込み」教育否定の結果の学力低下
苦瀬雅仁
大学教授
経済協力開発機構(OECD)の学力テストの結果、また日本の子供たちの学力の低下が示された。NHKなどのマスコミでは「考えさせる教育が不足」「実験などの増加が必要」と報道している。確かに、科学を学ぶに当たり実験は大事であるし、それは関心を高めるきっかけにもなる。しかし、それには(1)授業時間が十分にあること、(2)必要な知識についての指導を併せて行うこと、が不可欠である。
長年マスコミ等により批判されてきた「詰め込み」教育をやめたため、授業時間が減って「考えさせる」ための時間も、それを体系化して知識として身につけるための時間も、不足してしまった。「知識偏重はいけない」「考えさせることが大事」という点ばかりを過剰に強調し、生徒が実験などによって持ち始めた関心を、体系化された知識として身につけさせていくことができなくなってきたことが、今日の学力低下の大きな要因の一つである。
NHK等の今日の報道は、これまでの誤りをさらに重ねるかのように、「学力の低下」には「考えさせる授業が必要」というステレオタイプの型にはまった議論をしている。しかし「詰め込み」と批判されていた時代の教育の方が、考える力を含めて、はるかに学力が高かったことを忘れてはいけない。
「詰め込み」といわれていた時期には、今よりは長い授業時間の中で、実験も、考えさせることも行い、そして知識も同時に十分習得させることによって、学力を維持できたのである。それを無視して実験などの「考えさせる教育」を増やすことのみを強調するのは、偏った誤った考えであるといわざるを得ない。制度を変えて悪くなったのなら、もとの方が良かったのではないか、と考えることは極めて重要である。「詰め込み」と称された昔の教育の良いところに戻すことを考えるべきなのである。
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