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2025-02-04 10:32
共産党の『大軍拡反対・平和外交』で日本を守れるか?
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
共産党は機関紙『赤旗』で『大軍拡反対』を宣伝している。すなわち、「自民党政権による敵基地攻撃能力を含む違憲の大軍拡は、日本を対中軍事戦略の最前線に立たせるという米国の要求にこたえるためであり、際限なき軍事費増大は戦前の戦時国債乱発による侵略戦争の反省を無視した財政民主主義を破壊する暴挙である」(『赤旗』2025年2月1日、2月3日)などと自民党政権を激しく攻撃する。共産党が反対する「大軍拡」とは、自民党岸田政権が2022年12月に策定した「安保3文書」に基づく反撃能力保有などを含む防衛力の抜本的強化を指すものである。具体的には米国製長距離巡航ミサイル・トマホーク取得、射程1000キロ超国産各種ミサイル開発取得、イージス・アショアに代わるイージス・システム搭載艦建造、軍事衛星コンステレーション構築などによる防衛費8兆7000億円の予算を意味している。
共産党の宣伝によれば、ロシアによるウクライナ侵略前の2022年度の軍事費は5兆4000億円であったが、侵略後の2023年、2024年と軍事費は年々増大し、2025年度には8兆7000億円になり、2022年度に比べ3兆3000億円も増加している(『赤旗』2025年2月3日)。しかし、このことからも、自民党政権による防衛力強化、防衛費増大が2022年2月のロシアによるウクライナ侵略が最大の原因であることは明らかである。ところが、共産党は自民党政権による防衛力強化の最大の原因であるウクライナ侵略にはまったく触れず、「大軍拡」による軍事費増大の原因は上記の通り「日本を対中軍事戦略の最前線に立たせるという米国の要求にこたえるためである」と断定し、「対米従属」「日米同盟至上主義」を激しく攻撃するのである。
このように、自民党政権による防衛力強化の最大の原因がロシアによる「ウクライナ侵略」であるにもかかわらず、共産党がこれを無視する理由はこれを認めると「大軍拡反対」の根拠がなくなるためである。その根底には共産党のイデオロギーである「非武装平和主義」がある。共産党は党綱領で「自衛隊違憲解消」と「日米安保廃棄」を主張しているのである。
核軍事大国であるロシアによる「ウクライナ侵略」はまさに国際法違反の「力による現状変更」にほかならず、もしもこれが容認されれば、同じく核軍事大国である中国による「台湾侵攻」「尖閣侵攻」に波及しかねない。自民党政権はこのような事態を防止し抑止するために、米国と協力し防衛力の抜本的強化に取り組んでいるのである。
米国の対中軍事戦略の核心は、日米安保および米英豪オーカスによる対中包囲網である。すなわち、米国を中心とする上記各国の軍事協力による対中抑止力の強化である。中国の最大の弱点は、米国のように多角的な軍事同盟関係を有しないから、中国一国で米国を中心とする上記軍事同盟国と戦うことは極めてリスクが大きい。このことを習近平政権も熟知しており、このことが強力な対中抑止力となっているのである。共産党は、近年における「日米軍事一体化」の危険性を宣伝する。すなわち、日本自衛隊の対米従属関係により、対中軍事戦略においても日本自衛隊が最前線に立たされる危険性があるというのである。しかし、安保法制に基づく日本の集団的自衛権の行使は、無制限ではなく、第三国による米国に対する武力攻撃が日本の存立を危うくする「存立危機事態」や、日本に対する「武力攻撃事態」に限られるから、日本自衛隊が対中軍事戦略の最前線に立たされることはなく、あくまでも米国が対中軍事戦略の主体であり中心である。
共産党は党綱領で自衛隊の解消と日米安保の廃棄を主張する「非武装平和主義」の政党である。日本は自衛隊や日米同盟によってではなく東南アジア諸国連合との連携強化など「平和外交」により日本の平和と安全を守れると宣伝する。この観点から『大軍拡反対』の主張が出てくる。しかし、自衛隊も日米同盟も全く不要であり丸腰の「平和外交」だけで日本の平和と安全が守れると考える国民は一部の共産党支持者を除けば極めて少数であろう。このことは日本国民の89パーセントが<日本防衛>に自衛隊と日米同盟が役立っていると認める世論調査でも明らかである(2022年11月内閣府世論調査)。したがって、非現実的な共産党の安全保障政策も政権が近づけば現実的にならざるを得ないであろう。
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