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2008-01-08 03:14
総選挙を急ぐな
角田勝彦
団体役員・元大使
正月早々景気が悪い。新年始め4日の東京株式市場は「原油高・米株安・円高」などが直撃し、日経平均株価が前年末比616円安、14,691円で昨年の最安値を下回った。米経済への不安拡大で、4日のNYダウ平均が256ドル超下落した影響が、特に大きい。先行きについては、ブッシュ大統領の景気刺激策検討への期待から急落は一時的とする見方もあるが、サブプライム・ローン問題の不透明さから株価下落に拍車がかかるとの懸念も根強い。
昨年の世界経済の実質5%台の順調な成長は、米欧日先進諸国のもたつきを、2桁成長の中国やインド、ロシア、ブラジル(BRICs)が支えて実現できたもので、今年も米欧日は低成長に止まると予測されていたが、さっそく米経済の失速懸念が生じたわけである。対米輸出に依存するところ大きい日中両国経済への悪影響が心配される。昨年10月29日付本欄投稿444号「警鐘が鳴っている――世界経済の不安な動き」で、私は、特に中国の動きへの懸念を表明した。6日のある民放番組での2008年キッシンジャー大予測のように、中国経済が多少の浮き沈みこそあれ、今程度成長し続けることを願うのみである。
ところで、新年、我が国については、「縮み行く日本」という構図を強調するマスコミが多かった。その趨勢を変えるための処方箋として「改革による成長」を主張する意見も多かった。 正直のところ、同種の論者の円高警戒論とどう結びつくのか判らない。円高はドル建てGDPを一挙に増やすし、輸入原油も円で見れば安くなる。消費物価も下がろう。政府の介入は、そもそも自由競争に反するのではなかろうか。米国ですら国民の多数はグローバリゼーション(彼らは「あくなき自由競争主義」と解していると思われる)に反対している、との最近の世論調査がある。この傾向は、経済が中心課題になってきた今年の米大統領選挙で民主党優勢が伝えられることにも現れている。
私は上記投稿で「成長優先論にだけ耳を傾けることなく、少なくともここ暫くは、周りをよく見て経済運営に当たるべきだろう」と論じた。いまも同じ意見である。これは、国内政治にも関係する。今の日本には、総選挙で政治的空白を作る余裕はない。総選挙をやれば、与党が3分の2を割ることは自明である。ねじれはますますひどくなる。騒ぎを商売にする一部マスコミや再起を狙う落選議員、さらに政権奪取をすべての中心に置く野党の動きに左右されることなく、地道な運営を行うことが、この難局に当たる政府の責任である。2008年は、福田首相の得意技と推察する、じっくり腰を据えた政治に期待したい。
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