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2008-01-18 21:40
中国・セルビア・スリランカの共通点
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
表記の地域(中国・セルビア・スリランカ)の共通点は、域内に独立志向の少数民族をかかえ、対立・抗争が激化していることだ。独立志向側からの呼び方で言えば、台湾、コソボ、タミール(族)ということになる。
台湾は、立法院選挙で独立志向の与党・民進党が大敗したが、3月の総統選では独立をめぐる住民投票が実施される。独立賛成票が多数を占めても、中国は絶対に認めず、米国も不支持の方針なので大勢に影響ないだろうが、台湾は、従来国民党が固執してきた「中華民国」、つまり「二つの中国」ではなく、「台湾」という別個の国家としての独立を主張している。台湾が政治も経済も完全な自治を保ち、事実上別な国であることは万人の認めるところであり、中国は面子にこだわっているにすぎない。台湾独立を認めると、チベットはじめ周辺の少数民族に波及するのを恐れているわけだ。しかし独立しても結局、時間の経過とともに旧宗主国と平和共存に戻ることは、歴史が証明している。中国も懐の深いところを示してみてはどうか。
コソボは、セルビアの内陸の自治州で、イスラム教徒のアルバニア系の居住地区だ。同時にセルビア発祥の聖地でもあるため事情は複雑だが、国連の仲介ですでに独立承認の答申が出ており、EU(欧州連合)も承認の意向だ。しかし、セルビアが阻止に躍起になっており、ロシアも同調している。とはいえ、コソボが独立しても、セルビア系住民の居住と移動の自由が保証される限り、セルビアの国益が侵害されるわけではない。これも面子だ。経済・情報のグローバル化とともに地域の一体化と相互依存が進んでおり、独立は名目だけになりつつある。旧ユーゴは解体、モンテネグロも独立して、セルビアには失うものがもう残っていない。ここでもセルビアは度量を示すべきだ。
最後にスリランカ。日本とノルウェーの和平仲介が頓挫し、シンハラ族の多数派支配からの独立を掲げるゲリラ組織「タミール・イーラム解放の虎」との停戦協定が破棄され、再び内戦に突入した。抗争は過去25年つづき、死者7万人以上を出しているが、民族対立が終息する気配はない。原因は、80%を占めるシンハラ族の優越意識と同化政策にある。たとえ「タミール共和国」の独立を認め、スリランカが連邦国家になったところで、経済的に自立できない以上、シンハラの資本と経済システムに頼らざるを得ないのだ。インドネシアから独立した東ティモールが好例だ。いまインドネシアと東ティモールの両国は和解し、協力しつつある。もって他山の石とすべきではないか。
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