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2008-02-04 14:19
「ガソリン国会」に火を付けない方法
角田勝彦
団体役員・元大使
1月30日、衆議院強行採決で「ガソリン国会」に火を付けかねなかった「つなぎ法案」が衆参両院議長のあっせんで与党により取り下げられた結果、4月政局と早期解散の可能性は一応遠のいたようである。今の日本には政治的空白を作る余裕はないと主張している筆者として歓迎するところである(昨年10月29日付投稿「警鐘が鳴っている――世界経済の不安な動き」及び本年1月8日付投稿「総選挙を急ぐな」ご参照)。
どうも先行きが心配である。2月1日ブッシュ米大統領は、1月の雇用統計で4年5カ月ぶりに非農業部門の就業者数が減少したことについて「米景気が悪化する深刻な兆候だ」と述べた。同じ1日のOPEC臨時総会は、現状の原油高値水準が景気悪化の一つの原因とされるのにもかかわらず生産目標量据え置きを決定した。デカップリング(非連動性)という見方はあるが、中国も、伊東道夫氏が1月28日付投稿「中国におけるサブプライム問題の影響について」で「(中国政府は)オリンピックを無事乗り切るためにも、10年以上発展を続けてきている経済運営の手腕を発揮し、更なる飛躍をして、世界経済を牽引してもらいたい」と期待されたように、難局に直面している。1月中国株式市場の下落率が21.41%と主要52か国中ワースト2位 と悪かったのが懸念される。冷凍ギョウザ問題も中国の輸出に響くだろう。
日本国内での混乱は避けるべきである。「年度内に一定の結論を得る」とした議長あっせんは「3月までに採決する」こととは違う、との民主党幹部の発言もあり、先行きは予断を許さない。3分の2による再可決という便法も、もう使えなくなったとみてよかろう。そこで早めに妥協を図ることが必要である。まず税制関連法案から、野党が要求しているように、ガソリン税関連とその他の部分を分離し、その他の部分について早急な成立を図るべきだろう。国民生活の点から重要なものが多いのである。それでもガソリン税関連の問題が残る。2008年度予算案はもちろんである。揮発油税暫定税率が切れ、地方税を含め2兆6000億円の税が減収になっても、地方の道路整備は従来水準を確保するという民主党の案には無理がある。事実、2月1日、参院民主会派の有志議員9人は民主党に「代替財源の明示」を求める質問書を提出している。
他方、暫定税率を10年間維持し、余剰分のみを一般財源化するという政府・与党案も国民の支持を得ているとは言い難い。やや暴論だが、公共投資があまり景気浮揚効果を持たなくなった現在、3月以降地方税を含め2兆6000億円の税が自動的に減税されるまま(該当道路工事は中止)にして、大幅減税(民主党試算では1世帯あたり平均年5.3万円負担減)が日本経済にどんな刺激を与えるかを見るのも面白いかも知れない。国会論戦などを見ていると、焦点は暫定税率維持の可否より、一般財源化の是非に置かれてきたようである。道路特定財源を今後一般財源化しても、必要性が高い道路は作られていこう。4月混乱を避けるため、このあたりが妥協の落としどころにならないだろうか。
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