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2008-02-12 07:58
政府・与党は米大統領選の有力候補にルートを作れ
杉浦正章
政治評論家
米大統領選挙は、共和党の上院議員ジョン・マケイン、民主党が互角の戦いを展開する上院議員ヒラリー・クリントンかバラク・オバマの3人のうち1人が選ばれる方向となった。そのうち誰がなるか、これほど予測不能な選挙情勢も珍しいが、イラク戦争というブッシュの負の遺産を背負う共和党候補より、激戦で“変化”の上げ潮ムードに乗る民主党がやや有利との見方が強いようだ。これまで民主党の予備選で投票した有権者総数は約1400万人に達し、共和党の約1000万人をはるかに上回っている。米国のメディア情報を分析すると、とりわけオバマ対マケインの構図になった場合、オバマの方が有利となると言う選挙専門家が多いようだ。抜かりはないと思うが、政府・自民党も誰がなってもいいように、今から有力候補に非公式にしっかりしたルートを作っておくべきだろう。オバマの印象はどう見てもジョン・F・ケネディだ。ケネディは人を魅了する天性のカリスマを持っていたが、オバマもその天性を持っているようだ。神秘的な雰囲気がある。人種を越えて若年層に人気が高いのも、ケネディそっくりだ。暗殺の噂が絶えないのも、ケネディ型政治家であるからだろう。
ヒラリーとオバマは全く互角の戦いを展開しており、3月4日のテキサス、オハイオ両州で決着がつかなければ、8月の民主党大会にまでもつれ込むという見方も台頭している。上下両院議員、党幹部、元知事などで構成する796人の特別代議員獲得戦が既に展開されている。どちらが有利か予測できる専門家がいないのも珍しい。11月の大統領選挙の民主、共和両党の戦いをシュミレーションすれば、ヒラリーが候補になった場合には、米国民には根っからのヒラリー嫌いが多いことから、マケインが勝つという見方があるようだが、これも予断を許さない。オバマが候補の場合は、米国民は“変革”に雪崩を打つという見方と、人種的偏見が台頭するという見方があるようだ。しかしオバマが候補となった場合は、対マケイン戦では有利になると私は思う。最近共和党支持者の中で「オバマ共和党」という言葉が流行っている。共和党支持者の中からもオバマに票が流れる可能性があるのだ。ヒラリーに流れることはまずない。
そこで対日政策だが、各候補とも現段階では「票にならない対日政策」を論議する段階ではないのが実情だろう。事実上白紙だ。共和党の方が日本に理解があるという見方が強いが、ニクソン時代の米中頭越し交渉の例に見られるように、一概には言えない。現に米政権は北朝鮮との和解を日本に先行して模索している。ヒラリーの「米中関係は21世紀で一番重要な二国間関係」という発言も、単に極東情勢を把握していないだけのことだろう。議員の外交担当顧問で元国連大使のリチャード・ホルブルックが「対中関係を強化するには、同時に対日関係を強化せねばならない、ということは米外交の基本だ」と訂正している。
民主党はジャパン・パッシング(無視)に動くという見方があるが、問題はパッシングされる側にあるのではないか。日本は対米関係において、常に受け身の発想が根強い。この際政府・自民党には、発想を転換して、新大統領または新大統領候補に日本側から極東情勢をインプットし、極東政策をリードするくらいの意気込みがあってもよい。米国民は、はっきりした物言いを好む傾向がある。官民による大統領候補への事前の接近も、一時期に比べると弱くなっているような気がしてならない。欧米諸国の強い人脈、中国、韓国の対米積極外交と比較すると、ロビー工作一つとっても弱体化したと思われる。先手必勝である。政府与党にルートがなければ、既成の民間ルートを発掘するのも手だ。選挙が終わる前から、対日政策が白紙のうちから、有力候補に食い込んで、しっかりしたルートを持つことは、決して悪いことではない。ブッシュ政権に遠慮することでもない。
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