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2008-03-05 11:40
日本は北東アジア平和の構想を提示できるか
鍋嶋敬三
評論家
韓国の政権交代に伴って北東アジアを巡る外交が活発になってきた。北朝鮮の核開発問題の6カ国協議が停滞しているが、日米韓の結束強化で北朝鮮への圧力を強め、6カ国合意の実施に向けた前進を期待したい。核問題を超えて北東アジアの冷戦構造を解消する地域の平和と安全保障の構想を提示する用意があるか、当事国としての日本が問われている。韓国の李明博大統領は就任式当日の2月25日、初の外国首脳として福田康夫首相を迎え、北朝鮮問題で日米韓3カ国の協力強化で一致した。対北朝鮮融和策で日米とぎくしゃくした前政権とは様変わりである。首脳同士の相互訪問による「シャトル外交」の復活も決まり、4月には李大統領が来日する予定だ。
韓国では前政権時代ささくれだった米国との同盟関係の再調整が新政権の最大の外交課題である。李大統領は就任演説で米国との戦略的な同盟関係の強化をうたった。一方では「日本、中国、ロシアと等しく協力関係を強化する」と中ロへの配慮も忘れていない。3月に入ってロシア大統領選、台湾総統選、その後の李氏訪米や故錦濤中国国家主席の来日の予定など、今年前半の北東アジアをめぐる動きはめまぐるしい。この機をとらえて米国がライス国務長官を中韓日3カ国に派遣したのは北東アジアのパワーゲームで主導権を握る布石と見てよいだろう。
中国首脳と2月26日に会談したライス長官は北京で同行記者団に「6カ国協議をもっと早いペースで前進させたいという望みを中国と共有している」と語り、対北朝鮮圧力での協調姿勢を示した。米中外相会談で話し合った内容は6カ国協議合意の実施促進にとどまらない。ライス長官によれば、北朝鮮の核問題は事実上、関係6カ国間の協力の基礎になったという共通認識だ。さまざまな利害関係の協力に広げていけば「北東アジアの平和と安全保障のメカニズム」(ライス長官)の構想に行きつくという考え方で米中の基本的合意ができつつあるということだろう。
福田首相は2007年末の訪中で中国首脳と「戦略的互恵関係」の推進で一致した。だが、日朝国交正常化問題で日本人拉致、核、ミサイルの包括的解決を条件に掲げる日本に対して、北朝鮮の友邦であり、6カ国協議の議長として核問題の軟着陸を目指す中国との間では北東アジアの安全保障の在り方を巡って大きな違いがある。日本は米中とともに地域の主たるプレーヤーとして「メカニズム」の形成に重要な責任と役割を果たす立場にある。米中のハイレベルの戦略対話が進んでいる中で日本政府として明確なビジョンを示すことができるのか、故主席来日で試される場面がやってくる。
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