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2008-03-06 08:36
ギョーザ事件を左右する温家宝首相と公安省のずれ
杉浦正章
政治評論家
中国首相温家宝の全国人民代表大会(全人代=国会)における見解は明らかに公安省刑事偵査局副局長余新民の発言と“ずれ”がある。この“ずれ”が全人代対策であったかそうでなかったかによって、ギョーザ事件が解決に向かうかどうかを決定づけるものとなろう。
温家宝は全人代で対日関係の好転を日本の名前を挙げて報告するとともに、①安全生産の仕事を高度に重視し、安全監督管理体制を充実させ、安全生産にかかわる法制の整備を強化した、②食品医薬品など7,700種類の製品の安全基準を制定または修正する、③基準は輸出先の国家基準にも合致させる、との見解を表明した。この発言は公安省のメタミドホスの日本での混入を示唆して、中国側の責任を否定した記者会見と大きな温度差を見せるものである。なぜなら温家宝発言は中国国内に食の安全に関する問題があるのを認め「基準を輸出先の国家基準にも合致させる」とまで言い切ったからだ。これはある意味で中国側に解決すべき問題が存在することを間接的に認めたことに他ならない。好転した対日関係を、ギョーザ事件で壊すべきではないという政治判断も明らかに働いている。そうすると公安省の記者会見は何であったのかということになる。
一番考えられるのは全人代対策の“出来レース”である。大会前にギョーザ事件を認めてしまえば、各地に存在する食の安全問題に火がつき、政権基盤を揺るがしかねないと判断、公安省に否定させたのである。その上で全人代で日本向けに”秋波”を投げかけたのだ。この出来レースならば政権は公安省に対するコントロールが利いていることになる。国内的には見事な情報操作である。したがって公安会見が全人代向けにいったん役割を終えたことになれば、ギョーザ事件の本質解明に中国側も動くことが予想される。
他方、温家宝と公安とのずれが内部対立に根ざしたものだとすれば、問題はこじれ続けるだろう。日本政府もおそらくこのずれへの分析はまだ出来ていまい。これは日本政府が主席胡錦涛来日を「5月の連休明けに訪日日程を変更できないか」と中国側に打診していることからもうかがえる。当初の「桜の咲く頃」から一ヶ月の延期である。これも中国側への牽制の意味もあろうが。
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