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2008-03-26 08:06
都民の怒りうっ積、選挙直撃か
杉浦正章
政治評論家
東京都知事石原慎太郎の暴走が止まらない。けんけんごうごうたる世論の非難を無視して、都議会は、26日の予算特別委員会で、自民・公明両党の賛成で経営難の新銀行東京に都が追加出資する議案を可決する。都議会での勝負はあった。問題はうっ積した都民の怒りがどこにはけ口を求めるかだが、おそらく来年の都議会選挙か、場合によっては都知事リコール運動が勢いを得るかもしれない。住民訴訟が起きてもおかしくない。衆院選挙にも影響を与えずにはおかないだろう。
追加融資問題は、全ての全国紙が社説で400億円の追加に反対し、石原への批判を繰り返した。これに対して石原は、「私が社長ならもっと大きな銀行にしていますよ」と傲慢不遜なばかりか、経営責任を一切旧経営陣に転嫁するという「陋劣(ろうれつ)」極まり無い態度をとり続けた。そして追加融資実現の見通しが立つと、一転して「深くおわび申し上げます」と媚びるように謝罪した。しかし責任を取って辞任する考えは全くない。最新の世論調査では、奇しくも朝日新聞と読売新聞の調査結果が完全に一致した。朝日の調査では、追加出資について、「反対」が73%にのぼり、「賛成」は17%にとどまった。読売も全く同数で、調査史上まれな現象を呈した。いかに都民の判断が現時点において固まった信念になっているかを物語っている。
問題は、こうした中で追加投資賛成の方針を認めた都議会自民党と公明党の判断だ。金融業のプロも世論も都民も都の幹部からさえも、再建は困難との判断が出るなかで、都知事の“延命効果”しかない出資をなぜ認めるかである。政党は、知事へのチェック機能を全く果たしていないのである。しかも、これだけの大問題にもかかわらず、両党本部は動かず、都議会レベルに任せたままである。大岡越前守なら「これでは御政道が成り立たぬ」と、刀を抜く場面だ。かって都議会で同様の事態が発生した。都民がやはり怒り心頭に発した事件だ。1965年3月に発覚した都議会大汚職である。都民の間から都議会解散要求のリコール運動がほうはいとして巻き起こり、ついに都議会は6月14日に解散した。
7月23日の「都議会出直し選挙」に都民の怒りが爆発し、自民党は改選議席で過半数割れどころか、3分の1に激減し、社会党が第一党となった。おそらく都議会自民党は、都議会選挙は来年と高をくくっての対応であろうが、この問題は新銀行東京が存在し続ける限り継続する。近づく衆院選挙にも確実に跳ね返るだろう。また都民感情は、床にガソリンがまかれたような状況にあり、ひょっとしたら都知事リコールの動きが盛り上がるかもしれない。都知事リコールには、有権者の3分の1の署名が必要だが、これまで300万という数字に尻込みしていた運動家も、状況をチャンスと見るかもしれない。いずれにしても無理を通して、道理を引っ込めてはならない。
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