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2008-04-21 08:08
マスコミは地方補選を国政に直結させるな
杉浦正章
政治評論家
もういいかげんにしないかといつも思うのは、一地方の衆参補選や首長選挙をめぐるマスコミの報道ぶりである。何が何でも中央政治、時には政局に結びつけようとする。とりわけ民放テレビでは、4月27日の山口衆院補選の枕詞が「政局直結」となっている。みのもんたに至っては「日本の夜明けは長州から」とはしゃいでいる。一地方の、全体から見れば480分の1議席の補選が、どうして政局をはかるメルクマールになるのか。非科学的な馬鹿の一つ覚えもいい加減にしたほうがいい。米ニューヨーク・タイムズや英タイムズなど欧米の有力紙が、選挙報道で一地方の選挙をフロントに大々的に取り上げて、国政に直結させる報道をしているだろうか。見たことも聞いたこともない。
非科学的という根拠は、まず投票率だ。補欠選挙というのは毎回、投票率が極めて低い。40%台か場合によっては30%台だ。本選挙とは盛り上がり方がまるで違う。低い投票率で選挙した場合、政党の組織率が結果を左右する。必ずしも与野党の主義主張が反映されない。第二にその地方の関心事と全国レベルの関心事との隔たりだ。どんな新聞も全国レベルのテーマの世論調査を一地方だけで行わないのは、判断をミスリードされるからだ。全国レベルで世論調査をして初めて調査が成り立つのだ。選挙も同じではないか。
第三に日本の一部マスコミが自らの主張のテコとして補選を“利用”しようとする側面がある。これは報道に名を借りた政治への“介入”であり、公平さに欠ける。1987年に社会党が勝った参院岩手補選のように、売上税導入の是非一本に絞られた場合は別だ。ところが山口の場合朝日新聞の世論調査によると、投票行動の選択肢は「年金医療」40%、「ガソリン税や道路財源」27%「地域経済」15%と割れている。これではガソリン問題を問う選挙とはいえない。おまけに選挙の見通しは大接戦であるという。大接戦なら、どちらが勝とうとますます中央政治の判断材料にはならないし、すべきではない。
自民党候補が敗れた場合には、ガソリン税法案再議決反対のマスコミは選挙前から準備している「山口補選自民敗北、ガソリン再議決困難に」「再議決すれば、民主、問責提出へ」を見出しにした“予定稿”を一面トップなどに踊らしたり、「福田政権窮地に」と解説を書くだろう。テレビは鬼の首を取ったように報ずるだろう。無責任なスポーツ紙などは「福田は総辞職か解散へ」とやりかねない。そうかといって民主党候補が敗れた場合、「有権者、ガソリン再可決を支持」とは見出しにはならないだろう。せいぜい「小沢神話、不発に」くらいか。一地方選挙の結果がこれほどの報道ぶりになるのはおかしい。騒ぎすぎだ。選挙が日曜でニュースがないためでもあるが、扱いが大きすぎる。
首相・福田康夫は山口二区の結果がどうであれ、もともと「窮地」なのであり、ガソリン「再議決」は勝ち負けにかかわらず断行される方向なのである。それにしても民主党がおとなしい。勝つ流れなら補選だろうが首長選だろうが、政局に直結させようとするはずの民主党だが、代表・小沢一郎は「一選挙区の勝敗と国政全般の問題はイコールではない。国政全般に対する考え方が拘束されることはない」などとご愁傷様にも予防線を張っている。選挙に勝ったらこの言葉を翻して、一挙に攻勢に出て、党内首相問責決議反対派を説得し、提出に踏み切る構えなのだろう。例によって“死んだふり”だ。
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