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2008-05-29 08:33
政府は打算、計算抜きで中国を支援せよ
杉浦正章
政治評論家
日中首脳会談で合意した「戦略的互恵関係」推進とは、まさにこういうことではないか。中国が四川大地震の緊急支援で、自衛隊派遣を含めた物資輸送協力を日本政府に要請、日本側は、航空自衛隊の輸送機を派遣する方向だ。隣国の未曾有の災害に対して、政府はこの際利害得失を考えている暇はない。テントに限らず多方面のニーズに応じて対応すべきである。中国政府の自衛隊支援要請という驚くべき方向転換の背景には、背に腹は替えられない事情の上に、“オリンピック”への強い執念が見られる。既に中国には米国、ロシアの軍用機が入っており、日本の自衛隊機の入国も、有史以来の大災害に背に腹は替えられぬということであろう。政府筋によると、自衛隊機によるテント等支援物資の輸送要請は、中国軍筋から北京大使館の防衛チャンネルを通じてあったものらしい。誇り高い国の政府が、よくよく追い詰められていなければ取る対応とは思えない。日本側も中国側には地震直後から、自衛隊でできることはないか、を非公式に打診していた模様である。
災害時ほど規律と訓練に基づく軍事組織が有用になるときはない。百年兵を養うのは、むしろそのためでもある。自衛隊幹部が「画期的なこと」と喜んだというが、たしかに日中友好百年を展望すれば、いまこそ打算、計算など度外視して、日本としてできる最大限の支援を展開すべきである。幸いにも先に派遣した国際緊急援助隊が期せずして中国国民から歓迎され、医療チームの現場にも首相・温家宝が自ら訪れ、感謝の意を表明している。中国政府が見据えているのは、3か月後に迫ったオリンピックである。国家の威信にかけても、これを延期するわけにはいくまい。温家宝が「これからの震災救援は、被災住民の生活保障と家屋再建に重点を置き、3カ月以内に被災者の生活を正常化させる」と述べているのは、オリンピックまでに地震の粉じんを何としてでも治めたいからにほかならない。それには自衛隊だろうが何だろうが、支援をえり好みしてはいられないのである。産経新聞が「対日強硬派封じ」が狙いのようにトップで大見出しをとっているが、浅薄な見方だ。
この際政府は、支援物資もテントに加えて、仮設住宅、医薬品、地震湖対策の重機、運搬用トラック、場合によっては空輸ヘリ部隊の派遣など、緊急対策から中期支援対策へ切り替えて、あらゆる支援可能な態勢を整えるべきだ。場合によっては補正予算を組むくらいの覚悟があってもよい。隣国の大災害を目にして手をこまねくときではない。ともに“井戸を掘って”信頼関係を飛躍させる機会である。田中角栄が生きていたら「他国に先んじて、他国より大量に送れ」と指示するだろう。ここは官僚的発想で対処すべきではない。5月19日付けの本欄に投稿した拙文「福田首相は大災害支援の多国間協定に動け」でも指摘したが、アジアでは地震や津波、台風など大型の災害が頻発しており、国際的な体制作りが不可欠の課題になっている。いまは日本が主導的な役割を果たして、サミットなどで大災害対策も重要議題として取り上げ、国際的な体制作りに着手すべきである。普段から、災害対策の協議を組織的、定期的に続けることによって、協定加盟国に共通の信頼関係が生じ、大災害発生時に即応できる信頼関係が発展することは言うまでもない。繰り返すが、鉄は熱いうちに打った方がよい。政府は国際的な体制作りにむけてイニシアチブをとるべきである。
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