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2008-06-09 12:08
30年経っても、まだ成田空港は未完成でよいのか
大藏雄之助
評論家
成田空港が30周年を迎えたと聞いて、すっかり忘れていたことを思い出した。1960年代後半の激しい「成田闘争」をへて、当初の予定よりも大幅に遅れて1978年5月20日にやっと開業と決定したものの、今でいう「自爆テロ」の頻発も予想されたため、日本政府は新空港の発着第1便はともに日本航空を当てることに決定した。最初の着陸機はJALのフランクフルト発モスクワ経由便ということになり、TBSは当時モスクワ支局長をしていた私に、その飛行機で帰国するように命令した。危険を恐れてキャンセルが出たとかで、この便はかなり空席があったが、私はファースト・クラスに乗ることにした。
機中で一夜を過ごして、快晴の朝、平穏のうちに目的地に近づいた。窓から見下ろすと、厳戒態勢がとられているらしく、空港付近には動いている車両は見えなかった。機内には一種の緊張感があって、客席は静寂だった。そこへカーテンを開けて、後方から1人の男が入ってきた。パーサーが「間もなく着陸しますが、NHKの記者が先に降りたいということですので、よろしくお願いします」と、われわれに向かって説明した。早速異議申し立て。
「ちょっと待ってください。誰でも早く降りたいのだし、ファースト・クラスがエコノミー・クラスより優先する、というのが慣例ではありませんか。それに、特にお断わりはしませんでしたが、私はTBSの記者です」と述べると、パーサーは「まことに失礼しました。NHKの方にはあとにしていただきます」と言って、男を追い返した。こうして私は無事新空港到着客第1号になり、すぐ近づいてきたNHKの中継のアナウンサーを失望させた。
成田は30年後も未完成であり、アジアの多くのハブ空港に大きく後れをとっている。私は、土地の選定の経過は不明朗かつ不適切だった、と今も思っているが、決定した以上は、当局は航空機の離着陸の安全のためにも、万難を排して立派な国際空港に仕上げるべきではなかったか。
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