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2008-06-24 08:06
首相の消費税発言は1週間の幻想
杉浦正章
政治評論家
首相・福田康夫の“消費税発言”は猫が虎の吠え声を上げたかと思ったが、案の定、記者会見で事実上撤回した。いまは数か月先の政局が読めない段階に入っており、ましてや2~3年先のことを言えば鬼があきれる。2~3年後に福田政権はほぼ確実に存在しない。福田は6月17日消費税導入について「決断しなければいけない大切な時期だ」と述べ、消費増税は避けられないとの認識を示していた。「決断しなければならない時期」という日本語は、通常早ければ数週間、遅くとも数か月後をイメージする。もちろん来年度の引き上げを視野に入れた発言ととれる。支持率低迷で息も絶え絶えな福田が、いよいよ反転攻勢に出たかと、世の中を“賞味期限1週間限定”で思わせたことになる。
しかし6月23日の記者会見では「社会保障国民会議や(行政の)無駄ゼロの成果を見つつ、この問題には取り組みたい。景気がどうなるかも無視し得ない。総合的に考えるが、もう少し先の段階だ」と述べ、「2、3年とか長い単位で考えたものだ」と“火消し発言”に終始した。恐らく福田は、経済財政運営の指針となる「骨太の方針2008」の原案に歩調を合わせなければ、矛盾すると思ったに違いない。6月23日まとまった同方針は、消費税を含む抜本的な税制改革について具体的な展望を示さなかった。福田の“官僚体質”がここでも顔を現したことになる。読売新聞が6月24日の社説で「一般に増税よりも歳出削減が先という主張はうけがいい。それをタテに、消費税率引き上げという苦い薬をためらい続け、改革を先送りすることがあってはなるまい」と述べているが、まさに正論だ。首相はためらいどころか、確信的に問題先送りに出たことになる。
2~3年後というのは、この間自民党が政権を賭けた総選挙が確実にある。政権を失えばもちろんのこと、大幅に議席を失えば首相責任を問われる。その前に「ポスト福田」が動くかもしれない。こうした状況の中で“約束”事が成り立つだろうか。記者会見では内閣改造についても「白紙」と繰り返し、優柔不断さを露呈させた。また「国民の目線での政治、行政改革は確実に前に進んでいる」とはよく言ったものだ。消えた年金、後期高齢者医療制度を思えば、この発言は返上したいところだ。要するに、消費税発言で強力なリーダーシップを発揮するかに思わせたのは、幻想だったと言うことになる。「福田は、福田」であった。これでは支持率も、政治の行きづまりも打開できない。
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