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2008-06-27 08:21
対米依存でない、独自の対北朝鮮外交を追求せよ
杉浦正章
政治評論家
米国が拉致解決の「テコ」を外したといって憤ることは、自らの外交努力のなさを露呈させていることにほかならない。拉致問題は国際舞台の流れから見れば優れて日本と北朝鮮の二国間問題であり、もともと日本独自の外交努力で解決へと導かれなければならない問題だ。この際徹底して「拉致進展なければ、援助なし」の原点に戻って、対北外交を再構築すればよい。元首相・安倍晋三からしきりに不満の声が出されているが、問題は、 もともと安倍政権時代に「拉致」を動かすテコとして米国独自の外交政策にすぎない「テロ支援国指定」に依存しすぎたところにある。首相・福田康夫はその修正をはかり、「核」への傾斜をかいま見せてきており、米国はその微妙な変化を“察知”して、指定解除に踏み切ったともいえる。日本政府も国内世論対策上米国に対して“怒ってみせる”というのが“筋書き”ではないか。これまでの政権がよく使った手だ。
野党が「テコを外された」と単純に怒るのは自由だが、もともと結びつけるのに無理がある問題に、日本側が期待感を持ちすぎた結果である。その点、共産党委員長の志位和夫だけは「核問題の解決は、拉致問題の進展を促す新しい条件になり得る」と米政府の対応を歓迎したが、珍しく大局を見ている。新聞の社説も、朝日新聞が「北朝鮮の申告:完全な核放棄につなげよ」、読売新聞が「北朝鮮核申告:核廃棄への課題が多々残る」、毎日新聞が「北朝鮮の申告:核廃棄へ疑念残すな」と三大紙のいずれもが、北の申告内容に懐疑論や不信の念を表明している。「しかし、“核”と“拉致”の結びつきにこだわる社説は、産経新聞以外にはない。朝日は「日本の安全のために、何としても北朝鮮に核を放棄させる。その過程で、拉致というむごい犯罪に解決の道を開く。この原点を見失わずに、前に進むことだ」と、事実上「核優先やむなし」の論調で締めくくっている。
福田も「交渉しなければ、解決しない」と述べているが、その通りだ。交渉の歯車を動かすことが、いま日本の外交に求められているのだ。「日米関係に亀裂が生じたと受け止めれば、北朝鮮を利する」と外務省筋が述べているが、そんなことはとっくに北は計算のうちだ。日米に亀裂を生じさせるための北の対米妥協でもある。従って、今後北朝鮮復興への最大の資金供出国となり得る日本は、その立場を最大限に利用して、対北朝鮮外交を展開すべきだ。6者協議の枠が大事だが、今度ばかりは譲歩や遠慮をする必要はない。あくまで「援助」と「拉致進展」は一体不可分のものと主張し、また時には6者の枠にとらわれず、独自外交を展開すればよい。自国の外交を他国に依存しすぎないことだ。レームダックの米大統領・ブッシュの「拉致は忘れない」発言などは噴飯ものであり、これを金科玉条にしては誤る。むしろ元首相・小泉純一郎の単独訪朝を実現するくらいの意気込みと独自性を考慮すべきだ。
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