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2008-09-29 20:35
解散・総選挙は、やるべき仕事をした上で
角田勝彦
団体役員・元大使
9月28日の中山国交相の在任5日での引責辞任は、発足したばかりの麻生政権の早期解散・総選挙戦略に変更をもたらすかも知れない。自民党には打撃であったが、災いを福に転ずる心構えで、自民党はこの際政権与党として「安全・安心」確保のための国会での責任を果たすべきである。総選挙後予想されるのは、政局の混迷である。そのとき「安全・安心」確保はいっそう困難となろう。自民党の、総裁選でブームを巻き起こし、余勢をかって民主党との決戦に臨もうとした基本戦略自体、出来レースとの批判から、期待したような支持率の向上に繋がっていない(新内閣支持率は50%以下で福田内閣発足時を下回る)。小泉元首相の議員引退声明でもケチをつけられている。中山国交相の辞任は「一葉落ちて天下の秋を知る」の印象を生んだ。
この間にあって、麻生首相は、国会演説や小沢首相との党首討論など、党首力の勝負で「風」を逆転させることを狙っているようである。しかし、予算委員会での補正予算案審議では首相の任命責任が追及されよう。なお、この問題発言は、「類は友を呼ぶ」で、25日付ニューヨーク・タイムズ社説から「けんか好きな国粋主義者」と断じられた麻生首相の政治姿勢への国民の懸念を増大させるおそれがある。このため、自民党内に「10月3日の代表質問最終日に予算委を開かないで解散すべし」という選挙中心の戦略案が生まれている。しかし、これは、あまりにも無責任である。「安心」のための緊急経済対策を盛り込んだ補正予算案の重要性は論ずるまでもない。世界的経済困難のなかで不況懸念の日本には、その審議を選挙後に延ばす余裕はないのである。
さらに、麻生首相が無理して出かけた9月25日(現地時間)の国連演説で「日本が今後とも国際社会と一体となり、テロとの戦いに積極的に参加していく」と述べた国際約束がある。来年1月15日に期限切れを迎える新テロ対策特別措置法改正の決意表明である。国連安保理では、22日に前回は棄権のロシアも賛成した日本参加の海上阻止行動への謝意表明が行われた。米海軍長官は26日、日本の給油継続に期待を表明している。民主党大統領候補オバマ、共和党候補マケインの双方とも、26日初の討論会で、「テロとの戦い」、とくにアフガンでの努力重視を表明した。公明党の消極的姿勢もあり、再可決は無理でも、せめて糸口をつけられないだろうか。
政治は勢いで、11月2日投開票の予定で動いている流れは止めるのが困難とされるが、政治は国民のためにある。選挙対策ではない。麻生首相は、振るわなかった内閣支持率について、「仕事をした上での評価じゃないと」と巻き返しを宣言したが、「安心・安全確保」への具体的仕事もしないでの選挙での勝利は無理であろう。いま焦るのは「暴虎馮河の勇」に過ぎない。
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