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2008-10-02 20:53
緊急に医療安全調査委員会を設置せよ
大藏雄之助
評論家
高年齢になってから、まだ元気なので何か社会に貢献できることはないかと考えた。肉体的なボランティアは途中で倒れたりするとかえって周りに迷惑を掛ける恐れがある。窮極役に立つ仕事は医業であると思って、国立大学医学部の社会人編入試験を受けることにした。ところが、「気力、体力、記憶力が確かならば、年齢を問わない」と称しながら、看板に偽りあり、年寄りを養成するのは国費の無駄遣いだとして、書類選考で淘汰された。この件に関しては、ここではこれ以上書かないが、このような次第で、内外の医療に関してはいささか研究している。
イギリスのホーム・ドクター制度がサッチャー首相の誤った政策で崩壊して以来、日本の国民皆保険制度は、後期高齢者の健康保険問題を含めても、世界的にすぐれたシステムに数えてよいだろう。ぎくしゃくしている理由は、日本の医療費が先進諸国に比べてかなり低いにもかかわらず、政府がさらに抑制しようとしていること、またもともと人口当たりの医師の数が少なかったのに、医師過剰として医学生を減らしてきたことなど、行政側の責任が大きいが、国民もそのミスリードに騙されてしまった。
今緊急に対処すべきは、いわゆる医療事故である。患者やその家族は、治療の100パーセントの効果を期待していて、特に手術による死亡は、裁判沙汰になる。警察はこれを「殺人」として扱う。最近最も注目されたのは、福島県立医大大野病院での妊婦の癒着胎盤出血死で担当医が逮捕された事件である。一審で無罪となり、検察側も控訴しなかった。このような場合、諸外国では専門家の審査に委ねられ、故意でなければ刑事訴訟に発展することはない。これは航空事故で、操縦士の責任を問わない代わりに、経過を正直に報告させて、将来の事故防止に役立てるのと同じ趣旨である。日本でも一日も早く医療安全調査委員会を設置して対応しなければ、医療従事者は激減し、結局国民は適切な診療が受けられなくなるだろう。
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