ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2008-11-04 08:50
文化勲章受章者の記念写真を見て思う
山田 禎介
ジャーナリスト
日本国民も注目するアメリカ大統領選挙結果の判明は明日ですが、昨3日はこれも国民になじみの文化勲章の授与式と、皇居宮殿を背にした受章者記念撮影が行われ、それがメディアで報じられています。今年はノーベル賞受賞者も文化勲章受章者でにぎやかですが、そのノーベル賞の授与式は12月に行われるそうです。そこでいつも感じているこれらの賞への印象を述べます。ノーベル賞は、戦後の食うや食わずからほどない時代に、北欧から差し込んだ一条の希望の光だったのでしょう。この賞は、湯川秀樹博士を通して日本に与えられた最初の栄光となり、敗戦に打ちひしがれていた日本が初めて知った喜びだったのかも知れません。ノーベル賞は日本社会に戦後復興への自信を超えた、何かそれ以上のカンフル剤になったのだと思われます。
グローバルな世界にはノーベル賞だけでなく、同等のいろんなアカデミックな栄誉がある中で、それこそこのノーベル賞を唯一無二、至高のものと称え、崇めるゆえんではないでしょうか。とはいえノーベル賞は荘厳な授賞式と、そのあまたの関連舞踏会などのセレモニーは他を圧するそうで、今年受賞されたある学者は高齢を理由に地元の米国シカゴで受賞を済ませるとか、ある意味では賢明とも思えます。そのノーベル賞、それはひとまずおいて、セレモニーといえば今年も行われた文化勲章受章者の記念撮影風景のことです。文化勲章は昭和12年に始まったそうですが、折りたたみイスに座るスタイルはノーベル賞上陸当時の戦後風景の残照に見えます。あれは何とかならないものかと毎年思うものです。
記念撮影には戦国武将が使ったという和式折りたたみイス「床机」が定着していますが、ずっと以前は、会議室や集会所でよく使う事務用折りたたみイスのように見えたことも、また簡素な木製イスだったようにも記憶します。現在、皇居宮殿で行われる親授式は荘厳なオリエンタル・シーンであり、風雅なそのセレモニーは外国にも誇れるものであります。ですがその後の記念写真撮影に床机とはいえ、折りたたみイスはどうもそぐわない。晴天ではあろうが、寒風の霜月です。古い記憶ですが、高齢の女性受章者で授与式の翌日に亡くなられた方がいたように思います。11月の屋外はもうかなり冷えます。亡くなられた方も屋外記念撮影に出られたのでしょうか。また受章者一同が、このように座って記念撮影する姿、なにやら一般の結婚式で、親戚の長老たちが一堂に会した写真光景にも似ており、文化勲章の栄えある受章者を屋外に並ばせて「ハイ、パチリ!」には、何か薄ら寒い気がし、皇居宮殿での親授セレモニーとの落差にいつも疑問を持つのです。
同じ秋の晴天のもと、小・中運動会の来賓の貴賓席にも折りたたみイスが使われますが、天幕(テント)もちゃんと張られます。お茶席でも見かけるように本来、幕と床机はセットでしょう。庶民の姿、結婚式の記念写真も、折りたたみイスに座った姿が一般的ですが、もっと華やかな雰囲気があります。文化勲章受章者の屋外記念写真、新聞、雑誌にはちゃんと写った受章者が載るのですが、過去のテレビ映像では撮影前の「おぐし」のほつれを気になさる女性受章者の姿を何度も拝見しています。現状の日本らしい簡素さがいいという意見もあると思いますが、文化勲章の記念撮影も日本が称えてやまぬノーベル賞の受賞者もおられるのだし、この北欧の賞並の荘厳な雰囲気の場所でやって貰いたいと思いますが、いかがなものでしょうか。最近はもはや一流国ではないとも言われますが、一応、日本は世界に冠たる主要先進国の主要メンバー。そんなわが国の、記録に残す今日の文化の最高栄誉のセレモニーの写真にしては、何とも寂しすぎると思うのです。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:5546本
公益財団法人
日本国際フォーラム