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2008-12-24 08:07
日本は“貝殻追放”で衰退する
杉浦 正章
政治評論家
世論調査によって政権を追い詰めてゆく日本のマスコミのあり方は、古代ギリシャの都市国家アテネの貝殻追放(陶片追放)に酷似して、国家の衰退を招く気がしてならない。2人の首相を僅か2年で辞任に追いやり、今度は3カ月で政権末期を取りざたする。マスコミはいまや国会に議席のないまま、政権の命運を左右する「政治介入モンスター」と化している。報道のあり方はこれでいいのか。貝殻追放は、古代アテネで行なわれた悪徳僭主の出現を防ぐための市民投票である。危険人物の名を陶片に記入して秘密投票し、6000票を越えれば、その人物は10年間国外に追放された。一見民主主義のように見えたが、政争で相手を陥れるために扇動者が煽り立てて、大衆がこれに乗ったケースや、実績を挙げた者が嫉妬により投票されて、優秀な人間や市民のために尽力した人間が追放されたケースも多かった。アテネの衰亡を早めた一因と言われる。
マスコミ、とりわけ朝日新聞による自民党政権攻撃のパターンは、最近定型化している。まるでギリシャの扇動者のようである。麻生政権を例に取ればまず、解散先延ばし、指導力欠如などへの批判、誤読や失言癖など個人的特性への批判などで、政権への評価を落とす。これも一方的に断罪するような見出しを取る。逆に民主党や党内非主流の動きを、実態と反するほど大げさに取り上げている。これに視聴率狙いのTBSやテレビ朝日が同調して、程度の低い司会者やコメンテーターがはやし立てる。その上で貝殻投票のような世論調査だ。人気が急落の数字が出ない方がおかしい。急落すると、「政権末期」と書きまくり、これに野党が乗って、国会を混乱させる。
欧米先進国の場合、汚職や大失政で支持率が落ちれば、もちろん辞任につながる。ウオーターゲート事件を現地でつぶさに取材したが、ニクソン辞任の場合も、支持率を24%まで落とした上での辞任であった。しかし支持率が辞任の直接原因ではない。事件そのものの暴露で、身動きが取れなくなっての辞任であった。支持率が原因での辞任などはあり得ないのである。当時のニューヨーク・タイムズもワシントン・ポストも「支持率が低下したから政権末期だ」などとは決して書かなかった。新聞には「政権の進退に踏み込んではならない」という矜持がある。善悪を淡淡と描写し、判断を国民に委ねる。ブッシュの支持率が急落して久しいが、ニクソンの支持率を下回った現在まで、大統領辞任を主張するメディアはなかった。だいたい世論調査は、トップでは報じない。日本の新聞は、国民を教育し、リードしようとする。明治以来の“習慣”だが、現在の知的水準の高い国民にとっては、余計なお世話の報道態度だ。
加えて、日本のマスコミの場合、「坊主憎けりゃ、袈裟まで」という論調が多い。「100年に1度」の金融危機で、だれが政権を担っても対応に苦慮するのは目に見えているにもかかわらず、首相の一挙手一投足を悪意にとらえて伝える。安倍晋三のようにノイローゼにならない方がおかしい。千賀子夫人によると、麻生も明るい表情とは裏腹に、眠れない夜が続いているようだが、いつぷつんと切れるか分からない心理状況だろう。首相が3代にわたって、汚職でも失政でもなく、辞任に追い込まれる先進国がどこにあるだろうか。朝日の場合「自分が書いたら、そうなる」というおごりが、政治記事を貫いているような気がしてならない。「10月26日投開票」の断定誤報も、そのおごりがなせる業ではなかったか。それにもかかわらず、麻生が同日の選挙を先延ばしにすると、感情的なまでに反麻生の紙面を展開する。憶面もなくである。
このようなマスコミの姿勢は、例えば民主党が政権を取れば取ったで続くだろう。たとえば小沢一郎政権の場合でも、蜜月はせいぜい3カ月だ。以後は公私にわたる“諸問題”で小沢叩きが始まるのは目に見えている。小沢にはそれだけの弱みがある。細川政権も8カ月でつぶれたが、同様の運命が待ち構えているような気がする。欧米先進諸国に比べて日本の政権の寿命が極端に短いのは、紛れもなくマスコミの“政治介入”とも言える報道姿勢による部分がある。これは、長期的にみれば国力を衰退させ、他国に後れを取ることになりかねない状況である。
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