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2009-01-23 08:03

ひとまず乗り切った「消費税政局」

杉浦正章  政治評論家
 自民党の「消費税政局」は、玉虫色の収拾案でひとまず決着をみた。首相・麻生太郎は依然薄氷を踏む政局運営を迫られるが、既に定額給付金問題でも造反を2人に押さえ込んでおり、少なくとも来年度予算成立まで党内抗争が再発する可能性は薄れた。民主党も肩すかしを食らった形で、“政権揺さぶり”の態勢を再構築する。自民党内各派は、早ければ「5月選挙」を念頭に本格的な選挙準備に入る。税制関連法案の付則という思わぬ“伏兵”で発生した消費税政局だが、発生した当初から予想したとおり“玉虫色決着”に落ちついた。最近「ぶれた」との評を極端に嫌う麻生は、無邪気にも「わたしが当初申し上げてきた案が了承され、良かった」と述べ、反麻生の中川秀直らも鉾を納めた。

 しかし本当にぶれなかったかというと、ぶれなければ決着しなかったのだから、ぶれたのだ。「2011年実施」が「玉虫色」に変わったのだから間違いない。それはともかくとして、「消費税政局」がおさまった背景には、自民党内各派の強い“危機感”がある。ここで党内が分裂状態に陥り、「16人以上の造反」が発生して、解散か、内閣総辞職かを迫られた場合、もう自民党は政党の体をなし得なかっただろう。おまけに財務官僚の意向をそのまま受け止めて、与謝野馨が付則にはめ込んだ文言などで、内閣の命運をかける価値など、もともとなかったのである。危機感が元首相・安倍晋三による調整工作を可能にしたのだ。

 また、「消費税政局」は守りの麻生と攻めの中川秀直との戦いの側面も濃厚だったが、勝負は、中川が町村派内からつまはじきされた結果、麻生の辛勝だった。手ぐすねを引いていた民主党は、見事な肩すかしを食らった。代表・小沢一郎が3月解散に追い込めると踏んで、代表代行・菅直人と税制関連法案の付則の修正案を用意していたが、自民党の崖っぷちの急停車で、無駄に終わった。給付金での造反が2人にとどまったことともあいまって、絶好の政権揺さぶりの材料が消えてなくなり、「造反頼み」の戦略を見直さざるを得なくなった。

 こうした中で、解散・総選挙の行方がどうなるかだが、自民党内各派は選挙前に行う資金集めのパーティーを前倒しして、3月、4月に集中する方向となった。麻生にとって「攻めの解散」が出来る最後のチャンスが4-5月、と踏んでのことである。自民党は土砂降りの中で選挙に追い込まれることに間違いないが、予算関連法案の成立と定額給付金の配布が終わる4-5月は、残された最後のチャンスかも知れない。その機を逃すと、サミットと都議選の7月を越えて、限りなく任期満了に近づく。任期満了選挙は三木内閣の例を見ても、追い込まれる。時間が空きすぎると、総裁選挙を前倒しして首相を変えての選挙という動きも本格化しかねない。麻生にとって当面の狙い所は、春から初夏にかけての解散だろう。
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