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2009-03-04 07:59

小沢は進退窮まった

杉浦正章  政治評論家
 政治改革の旗手となるはずだった民主党代表・小沢一郎をゼネコン疑惑が襲った。公設第1秘書の逮捕は、小沢の代表辞任ばかりか、議員辞職に追い込まれる可能性まで内包している。政局はその舞台を暗転させ、「麻生問題」から「小沢問題」にスポットライトが移行した。恐らく小沢は説明責任を果たしきれず、民主党は「小沢では選挙ができない」という苦境に陥るだろう。政府・与党が「はしゃげる」場面ではないが、失地挽回効果は生ずるだろう。「麻生降ろし」がやや霞み、「小沢降ろし」に焦点が定まるだろう。小沢は今後捜査の進展に伴って、ぶざまな姿をさらけ出す前に、自ら責任を取って辞任すべきだろう。民主党幹事長・鳩山由紀夫から「国策捜査による陰謀」という声が上がったが、これは問題を基本的にはき違えている。

 「陰謀だから、世論が助けてくれる」とでも思っているのだろうか。権力の側は常に国策捜査をする可能性を秘めているからこそ、権力なのである。したがって野党党首ともあろうものは、身を律して物事に対応しなければならないのだ。ロッキード事件は法相・稲葉修による「逆指揮権の発動」、つまり国策捜査とされたが、これをつぶさに見たはずの小沢が、古色蒼然の自民党ゼネコン体質を一人受け継いだままであったことが、問題なのだ。西松建設と小沢のつながりは、恩師・金丸信の次男が、社長の娘と結婚しているほどの親密さの中での話だ。金丸から西松を託されたのが小沢であり、以後同社の“政界人脈”は、事実上小沢一辺倒となった。NHKは過去10年間に3億円に昇る献金を小沢サイドが受け取ったと報じている。長年にわたる癒着があるのだ。

問題は、政治資金規正法といういわば手続き法から捜査の手が進展して、斡旋収賄罪など刑法の事件へと発展するかどうかであるが、どうも政治資金規正法違反が限界とする見方が強いようだ。焦点は、小沢が違法な政治献金と知っていたかどうかだが、小沢は問題発生時に「原資が違法なものであるという事実がはっきりした時点で考えたい」という微妙な発言をしている。知っていた可能性を秘めた発言だ。しかし、党首とはいえ、野党とあっては職務権限の壁があり、斡旋収賄を小沢に及ぼすのは困難だろう。とはいえ、収賄罪に発展しなくても、インパクトは大きい。「政治革命」を唱え、戦場の先頭を切っていた“白馬の騎士”が、落馬しかかった形だからだ。秘書が逮捕されて議員辞職に追い込まれた例も多い。2002年には加藤紘一が自民党を離党、議員辞職している。

 政治的には息も絶え絶えだった自民党に、「神風」というほどではないにしても、「春風」くらいは吹き始めた様相だ。民主党内からは、はやくも「小沢では選挙を戦えない」と代表交代を求める声が台頭している。確かに、トップが黒い霧に覆われたままでは、自民党の絶好の攻撃目標となって、選挙にはなるまい。民主党幹部の一人は、「瞬間、岡田克也君の顔がひらめいた」と小生に漏らした。クリーンイメージの副代表・岡田に代われば、選挙は戦えるというのである。たしかに、これまでに出来上がってきた「総選挙自民党敗北」の構図の根幹は、民主党が政策と失政で政府・与党を追い詰めた結果であり、小沢の秘書の逮捕とは直接的に関係はない。ダメージは大きいが、いったん自民党を離れた民心が簡単に戻るとも思えない。小沢は記者会見で説明責任を果たそうとするだろうが、ゼネコンとの癒着の構図は誰が見ても明白であろう。また疑惑の小沢を「首相候補」として期待する世論調査の支持率も激減するに違いない。まさに進退窮まったのである。ここは小沢らしく未練を残さず代表を辞任して、政界から身を引く選択がベストであろう。
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