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2009-03-13 22:00

(連載)オバマ大統領の国防予算削減方針に深刻な懸念(1)

河村 洋  NEW GEAR代表
 アメリカの保守派は、オバマ大統領の大規模な経済支援策では政府の役割が大きすぎてまるで社会主義だと深刻な懸念を表明している。オバマ大統領は、そうして政府支出を増大させながら、国防予算は削減する方向である。それならむしろ対外経済支援策の予算を削減せよと保守派は批判している。カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員は「大統領の提案する国防費削減によってアメリカの国益が損なわれる」(“No Time to Cut Defense,”Washington Post, 3 February 2009)と警告している。ケーガン氏は、さらにハーバード大学のマーティン・フェルドスタイン教授の投稿を引用して、「国防費の削減は、経済刺激策の根底にあるケインズ経済哲学とも矛盾する」と批判している。オバマ大統領が米国の帝国主義的な役割をどのように考えているのかということが問題である。国防予算だけが問題なのではない。ロバート・ゲーツ国防長官の警告にもかかわらず、オバマ大統領はアメリカが抱える古い核弾頭を新しくしようとは思っていないようである。

 これらの問題点について、以下に検証をしてみたい。ケーガン氏は「国防費の削減によってアメリカの同盟国は狼狽し、安全保障での協力を得ようとするアメリカの努力にも支障をきたす。アメリカは『心配ない。我々は撤退する』ではなく、『心配ない。我々は留まる』と言うべきである。さらに、イランのような敵対勢力は、国防費の削減をアメリカが圧倒的優位を喪失したことの証と見なしてしまう。元イラク戦士のピート・ヘグセス退役陸軍大尉が述べているように『オバマ氏では、アメリカの敵になめられる』のである」と警告している。

 興味深いことに、共和党議員の中には「不必要な歳出は財政赤字を拡大させるだけなので、国防費よりも対外開発援助の支出を削減すべきだ」との声も挙がっている。これも大統領が国防費削減を説得するうえで課題となる。オバマ氏が国防費削減によって経済立直しをはかっていることについては、フェルドスタイン教授が「論理的に破綻している。大幅な財政支出が必要だと言うなら、国防予算も増額すべきである。軍の備品調達を大きく伸ばすこともできる。国内の軍事基地への公共投資なら民間部門への公共投資より迅速に行なうことができる。軍事調達の圧倒的大部分はアメリカ製である。さらに軍の人員採用と訓練を拡大すれば、雇用の増大に直接つながり、これが民間への熟練労働力の提供につながると同時に、軍の予備役の人員も増加させられる」(“An $800 Billion Mistake,”Washington Post, 29 January 2009)と指摘している。(つづく)
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