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2009-03-14 19:04

(連載)オバマ大統領の国防予算削減方針に深刻な懸念(2)

河村 洋  NEW GEAR代表
 一体、オバマ大統領はアメリカを強くしようとしているのだろうか、それとも弱くしようとしているのだろうか?歳出削減だけがオバマ氏の国防政策で疑問を呈すべき問題点ではない。オバマ氏は、ロシアに相互の大幅な核削減を提案しているが、この点についても、ゲーツ国防長官は「アメリカは、古い弾頭に代わる信頼性のある核弾頭を装備して、現在の抑止力を維持すべきだ」と述べるとともに、オバマ氏が包括的核実験禁止条約(CTBT)を推進しようとしていることにも懸念を表明している。すなわち「現在核保有を明言している国の中で、アメリカだけが核兵器の近代化を行なわず、新しい核弾頭の生産能力もない。率直に言って、今ある核弾頭の実験を行なうか、核兵器の近代化に着手しないと、信頼のできる抑止力の維持も、核兵器の削減もできない」とまで言っている。

 オバマ大統領は、2月24日に上下両院合同会議で行なった演説では、国防計画については多くを語らなかったが、「友好国、同盟国とともに、アフガニスタンとパキスタンにおける戦略を全面的に見直し、アル・カイダの打倒と過激派との戦いに全力を挙げる。私はテロリストが地球の裏側にある巣窟からアメリカ国民を襲う陰謀をたくらむことを許さないからである」と言った。これは正しいが、オバマ氏は、削減された国防費でアメリカがどのようにテロリストの陰謀を阻止するのかは語らなかった。

 さらに重要なことに、オバマ氏はイランと北朝鮮の脅威の増大にも、ロシアと中国の危険な挑戦にも言及しなかった。私には、オバマ大統領は、安全保障の維持と民主主義連盟のリーダーとして国際公共財を提供するというアメリカの特別な役割には関心がないように思えてくる。オバマ大統領が自ら三顧の礼をもって政権に招いたほどの専門家であるゲーツ長官の意見を尊重しないことは、奇妙である。また、大統領は全米経済調査審議会の名誉会長であるフェルドスタイン教授が指摘する論理的な矛盾も意に介していない。正しいか間違っているかはともかく、オバマ大統領は経済には最善の努力で取り組んでいる。このことには疑いの余地はない。しかし、国家と世界規模の安全保障に対するオバマ氏の取り組みには、疑問を呈さざるを得ないのである。(おわり)
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