国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-04-21 15:26

(連載)北朝鮮問題について(2)

河村 洋  NEW GEAR代表
 日米韓の反北朝鮮同盟は重大なジレンマに直面している。ピョンヤンの独裁者が危険な冒険主義に走ることを防ぐには、中国とロシアの関与が必要ではあるが、両国の介在は北朝鮮への効果的な圧力への障害でもある。北朝鮮危機に関する限り、オバマ大統領は以下の課題で試されている。それは核不拡散、中国とロシアという非民主的な大国との対抗関係、そして対テロ戦争への影響である。

 関係諸国の政府はこの危機のエスカレーションを避けたがっているが、アメリカ国民の57%は北朝鮮のミサイル施設に対して軍事攻撃すべきだと考えている。実際、イスラエルがイラン・イラク戦争の最中にイラクの原子力発電所を爆撃し、サダム・フセインの危険な野望を挫いた前例がある。危機に直面したアメリカ国民は、バラク・オバマ氏とジミー・カーター氏のアプローチよりも、ジョージ・W・ブッシュ氏とジョン・マケイン氏のアプローチを望ましいと考えるようになっている。もちろん、危機のエスカレーションは避けられた方が好ましい、と私も思う。しかし国連は、イラク・ギャップを克服できていない。また、中国もピョンヤンの独裁者を管理できていない。そのため、この世論調査結果は理解できる。

 最後にアメリカン・エンタープライズ研究所のニコラス・エバースタッド常任研究員の論文にも言及したい。エバースタッド氏は、このミサイル実験が全体主義体制の弱体化と重なる、というタイミングに注目する。ロケットが発射されたのは病弱なキム・ジョンイル氏の後継者が決定される最高人民会議の直前である。結論として、エバースタッド氏は「老い先短い君主が治める一党独裁体制は、今や音を立てて崩れようとしている。この問題の方が日曜日のミサイル発射よりも北朝鮮の行く末に大きな影を投げかけている」と述べる。

 この危機は、核不拡散問題を超えたより大きな意味合いをもっている。日米韓三国の同盟は、朝鮮半島での中国とロシアを相手にした地政学的な競合にも準備を怠ってはならない。これはオバマ大統領に対して長い時間をかけて科される試験である。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム