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2009-04-25 13:28

(連載)北朝鮮問題は、6者協議ではなく、5者管理体制で(2)

李相哲  大学教授
 つまり金将軍の嘘は、2012年までがリミットである。その間、何とか経済を立て直さないと、何がおこっても不思議ではない。そのことを金将軍も知っているのである。では、疲弊しきっている北朝鮮を立て直すのにはどうすればいいのか。開放区をつくってせっせと働かせても年間1億ドルも稼げないのだから、それでは間に合わない。デカイことをやって一辺に大きなお金を掴む必要がある。強盗をやるか、麻薬、または大量破壊兵器を売ったり、偽紙幣をつくったり、と禁断の手を使うか、自暴自棄するか、選択肢はこの3つしかない。北朝鮮が選択したのは、どうも2番目の「禁断の手」を使うことのようだ。すなわち、北朝鮮が現実的に選択可能な生きる道は、兵器を売ってお金にする道しかない。

 ミサイルや核をイランやテロリストに売るよりは、アメリカや日本に「売る」ほうがもっとお金になることを将軍さまは知っているのだ。2億ドルを使ってまでミサイルを発射したのは、その値段を吊り上げるためである。少々乱暴なやり方にも見えるが、北朝鮮は、一石二鳥どころか、一石三鳥を狙ったのだろう。将軍さまや周辺のエリートたちを除いて、北朝鮮の人々は、共和国が本当に衛星を打ち上げるまでの力をもつ国になった、と誇りに思っているだろう。お腹はすくけれど、日本や南朝鮮より力のある国になったんだから、めでたいことではないか、と思っているはずである。これが、彼等が狙った最初の一鳥(一石に対し)である。

 もう一鳥は、6カ国協議参加国からの代償だ。悪い子には飴を与えない、という原則はすでに崩れつつある。はやくも、北朝鮮をなだめようとする動きもある。ロシア外相の北朝鮮訪問やクリントン長官の発言がそうだ。三鳥目が、韓国である。嘗て韓国大統領は将軍さまが会ってあげるだけで6億ドルもの裏金を振り込んでくれたし、財閥企業は判子一つ押すだけで10億ドルを持ってきた。その甘い誘惑、記憶が甦ったのだろう。韓国を嚇せば、当面の困難は凌ぐことができる、と読んだのだ。開城工業団地で韓国人に因縁をつけて人質にとったり、工業団地の出入り許認可権を盾に、工業団地に大金をつぎ込んでいる韓国企業を困らせようとしている。

 これらの諸問題解決のために、韓国は何らかの形でお金を払わざるを得ないかも知れない。ただ、これだけでは将軍様の消費には到底おぼつかない。ミサイル発射後北朝鮮は、如何なる制裁決議も宣戦布告を意味するとし、「言うとおりにしろ」とばかりの態度を取ったが、それが無視されると、6者協議から脱退、寧辺の核処理施設の再稼動、独自の軽水炉建設というカードを切ってきた。では、我々はどうすればいいのか。北朝鮮が本当に望んでいること、ほしがっていること、の真意を的確に理解していれば、自ずと答えは出てくる。

 北朝鮮がきっているカードは、どれも有力ではない。例えば、6者会議をボイコットするというけれど、本当に焦っているのは北朝鮮である。はやく、誰かと交渉したい。本当は、金を出しそうな日本とアメリカと話あいたいが、ハードルが高く、道のりも長い。拉致を解決し、その後、核、ミサイルを解決しないと、一文たりとも出さないと言っている。アメリカを嚇すには力不足だ。いま北朝鮮ができるのは、大声で騒ぐことくらいしかない。いま、われわれがやるべきことは、非常に明確だ。だれも、北朝鮮の言うとおりにはならないことである。周辺諸国、特に6者協議当事者は、北朝鮮に6者協議に復帰するように説得するのではなく、北朝鮮を抜きにした5者で協議し、北朝鮮管理体制を構築することである。北朝鮮が悪いことをしたときは、5者で明確なメッセージを発する。日本の北朝鮮外交は、直接北朝鮮を相手にするのではなく、5者間を相手に連携を強化し、協力することに重点をおくべきだ。(おわり)
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