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2009-06-06 12:11

(連載)自民党「防衛大綱」提言の防衛費縮減撤回要求(2)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 また、最終案は、安倍政権が推進しようとした「国家安全保障会議」(いわゆる日本版NSC)の創設、内閣直轄の対外情報機関の創設、「国境離島(防人の島)新法」制定、および、離島の領域警備体制充実も新たに加えた。さらに、集団的自衛権の行使容認、武器輸出三原則の見直しといった重要な事項も盛り込まれている。集団的自衛権の行使容認の重要性については、何度も書いてきたので、ここでは繰り返さないが、武器輸出三原則の見直しは、他国との武器の共同開発を促進し、偏らない安定的な武器の調達と我が国の防衛産業の振興に役立つことが期待される。

 原案にあった敵基地攻撃能力の保有に関しては、「米軍の情報、打撃力とあいまった、より強固な日米協力体制を確立する」という記述になったが、これだけはやや釈然としない。対地攻撃能力をいわゆる敵基地攻撃に用いることが、日米同盟とどのような関わりをもつことになるかは、日米の役割分担に関する綿密な協議の後に結論が出てくる話である。対地攻撃能力それ自体の向上は、離島を含む本土防衛に必須なのだから、「適切かつ十分な対地攻撃能力を保有する」という表現のほうがよかったのではないかと思う。

 しかし、いずれにせよ、悪化する安全保障環境の中での防衛費縮減という我が国の安全を危うくする政策に「ノー」を突きつけた意義は極めて大きい。この点は大いに評価したい。なお、財務当局が防衛費に加えて防衛装備にまで越権行為まがいの容喙をするようになったのは、2005年度の予算編成において、当時の主計官が陸自の編制定数や潜水艦などの自衛隊正面装備削減を強力に主張したことが、悪しき前例となったといえる。財務当局が「金がない」というのは権限であるが、軍事的合理性に基づいた防衛当局の意見にも十分耳を傾けるべきである。両者の適切な関係が構築されることが重要である。(おわり)
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