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2009-06-08 20:52

(連載)北朝鮮の核兵器・ミサイル問題について思う(1)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 5月25日、北朝鮮が第2回目の核実験を行い、その後ミサイル実験を行った。安保理の対応を批判し、休戦協定の破棄その他の恫喝的言辞を弄している。北朝鮮に核兵器開発やミサイル開発を断念させる手立てはないものかと、皆頭を悩ませているが、妙策はない。

 第1に、軍事的なオプションは、1993-94年の最初の核危機の時に検討されたことがあるが、その時のシュミレーションでは、第2次朝鮮戦争になった場合、韓国側に100万近い民間人の死者がでるということであった。当時と違い、今では、北は現実に核兵器を保有している。もっと被害は大きくなる。軍事的なオプションはないといってよい。

 第2に、では、交渉をするのはどうか。これもこれまで散々試みられてきたが、成果はなかった。延々と続けられた6者協議は、北が一挙にそれを反古にし、そのために提供された重油や金融制裁解除、テロ支援国家解除など、すべて北はいわばただ取りしてきた。合意を守らない国と交渉して合意を作っても無意味である。無意味に代償を払わされることになる。これは6者協議についても、米朝協議についても、言えることであって、6者協議がいいか、米朝2国間協議がいいかの議論は、基本的にどちらも成果を挙げないということであろう。ただ、強いてどちらかがいいかと言うと、北朝鮮の崩壊を望まない中国に中心的役割を与える6者協議より、米朝協議のほうが望ましい。

 第3に、北に制裁を課すのはどうか。5月25日の核実験後、1週間が経過したが、安保理は新しい制裁決議をまだ採択していない。ロシアが5月の安保理議長国であったが、決議を取りまとめることなく退任し、6月1日にはトルコが安保理議長国になった。前回の核実験のあと採択された決議1718号は、国連憲章第7章に基づき、かつ非軍事的な措置を定めた憲章41条に基づく措置をとるとした上で、武器禁輸などの制裁を定め、6者協議への復帰を北朝鮮に呼びかけるものであった。今度の決議がいかなるものになるかはまだ分からないが、(イ)制裁の範囲・内容を広げる、(ロ)北朝鮮船舶の臨検を措置の中に含める(この場合、決議1718号での憲章41条への明示的な言及の適否が問題となり、単に憲章7章に言及するものとなろう)、の2点が問題となろう。(つづく)
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