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2009-07-17 09:27

(連載)日米同盟の重大な障害となり得る「核持ち込み」密約(2)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 日米の間で「核の傘」に関する協議を、日米安保史上初めて行なうことになり、まずは日米2プラス2の局長級協議が開催されることが決まった。これは、日米同盟史上極めて重要な意義を持つことだが、裏を返せば、これまで「核の傘」について具体的な協議をしてこなかったことの異常性が浮き彫りになる。
協議では、有事の際の核兵器の具体的な運用に関して日本側が説明を受け、オバマ大統領が目指す大幅な核軍縮と核抑止の整合性などを話し合うとのことである。これは、北朝鮮の核開発の進展や中国による核戦力の近代化の追求などにより、東アジアの安全保障環境が不安定さを増していることを背景とする。

 一方で、米国のオバマ大統領は4月に、究極の目標として「核兵器のない世界」を目指す考えを表明し、大幅な核兵器削減を推進する構えである。7月6日のロシアとの協議では、核弾頭配備数を双方が最低レベルで1500個まで大幅削減することで合意した。この様な、オバマ政権の性急とも言える核軍縮は、日本への「核の傘」提供と整合的に行われるのかどうか、大変懸念されるところである。したがって、オバマ大統領が目指す大幅な核軍縮と核抑止の整合性などを話し合うことは必須である。

 この重要な日米協議の大きな障害となりかねないのが、「密約」を否定する日本政府の答弁に他ならない。もしも、日米間で「密約」を共有し、核持ち込みに関する曖昧さを残すという戦略に徹するのであれば、それはそれで一つのやり方だが、米国側は「密約」はあったという公文書を公開している。つまり、日米間で全く立場が統一されていないことになる。これでは、日米間で話がかみ合わず、我が国への「核の傘」を効果的に提供するための方針とその具体的な運用策を綿密に協議することは不可能である。

 ところが、「密約」の否定は、歴代政府によって積み重ねられてきた日本政府としての公式見解である。それを、局長級協議などで変更することができるはずがない。したがって、ここは政治が決断して「密約」の存在を認めた上で、「密約」ではなく堂々と、核兵器搭載の米国艦船が日本に寄港することと領海通過をすることを認めるという形で、日米安保条約と非核三原則の解釈を改めるべきである。そうしなければ、短・中期的には北朝鮮の核、中長期的には中国の核に対する抑止力が不十分なものとなってしまう可能性が高い。総選挙後の政府の英断を期待したい。ただ、もし民主・社民・国民新党による連立政権となったならば、核兵器へのアレルギーが極めて強い社民党の反対が予想され、大いに憂慮される。(おわり)
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