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2009-08-09 23:21

衆議院選挙の各党マニフェストを見て思うこと

宮崎 厚  求職中
 衆議院選挙に向けた各党の主張を見ていると、これから世界のオピニオン・リーダーになろうとする日本にとって、やや寂しい感じを受けました。「安心社会」「国民目線の政治」「行過ぎた市場主義からの決別」等々。世の中、国家が安心社会など作ってくれたら、我々個人は何をしたら良いのか。「安心だから、家で寝ていろ」ということか。「安全」までは努力が必要だが、「安心」となったら、やる事が無くなるのではないか。「安心な生活」とは、誰に生活を見てもらうのだろうか。国に見てもらうとしても、それは国民から税金を払ってもらって、それで「安心」生活を送るなどというのは、経済社会構造を無視した詭弁ではないのか。その税金を払う国民こそが、我々自分自身ではないか。「安心」とは、そもそもそのために各自が努力する個人活動の目標ではないのか。若者が「安心」に浸って、怠けだしたらどうしようもない国になってしまう。「安心させて欲しい」とは、一業なし終えたお年寄りが、子供や孫に「しっかりして欲しい」と求める言葉ではないだろうか。日本国民はそんな事を中央政府に求めていないし、世界的な共感も得られまい。ましてや、「国連の常任理事国になるにふさわしい」との世界の支持が得られるとは思えない。

 次に、「国民目線」もおかしい。政府は国民の視野を広め、意識を向上させ、国家をリードしてくれないといけない筈が、国民の現状維持志向に同調して、社会の発展、改革のリーダシップのかけらも感じられない。普通の庶民は、皆自分の生活に真剣であり、そんなに才能や能力に恵まれているわけではなくとも、一生懸命自分の仕事に努力しているのであり、天下国家を論じて、全体の事をどうこうする余裕は無いのが実情だ。その努力が花開くような社会の仕組みを整えるのが、政府の役割ではないのか。そんな時に、「国民目線」だの、「生活者の気持」だのという「庶民感覚」の人が、国のトップになって大丈夫なのか。国費を無駄使いし、私利私欲を肥やす「政治家という庶民」が、自分だけ「安心」して、結局国をダメにする政権だったらどうしようか。私欲を忘れ、天下国家のために身を挺してもらうのが、政治家ではないのか。自治体の行政サービス・レベルと国家政策を同じレベルで論じてよいほど日本は豊かであると言うのなら、それは、おごりと爛熟もはなはだしい。日本もまだまだ足りないところや、向上させる点はいくらでもあり、現状維持に入るのはまだ早い。

 3番目の、「行き過ぎた市場主義」とは何の事だ。郵政民営化は、国民の3分の2が支持した政策だ。しかるに、国有化に戻したほうが良いというのか。国民の意思に沿ってよい形の民営化にするのが、本来あるべき姿である。国際的な人や、モノの交流はもっと進め、世界が民族主義のタコツボ化して抗争が頻発しないようにすべきである。昨年来の世界経済の混乱は、金融に原因がある。人・モノ・資金といった本来の資源配分の最適化のために、グローバル化や市場機能は最大限活かさないといけない。問題があったとすれば、本来形の無い管理通貨制度の下で、マネーの自由化に奔走した連中が引き起こした事である。実際、自ら付加価値を生まない金融資産が、実体経済の何十倍にも膨らんだ状態は異常であり、それが壊れるのはいつの事かと皆が感じていたが、いけるところまで行ってしまえとして取った行動の帰結であり、世界の実物経済がとばっちりを受けてしまった結果である。金融資産とは値上がりすればするほど皆が喜び、資源の最適配分とは程遠い。何しろ管理通貨は無制限であり、帳簿に数字を書くだけで増えるのであるから。

 今後、金融資産の無制限な信用創造による拡大は「管理通貨制度」の名の通り、きちんと管理統制すべきであり、本来の資源配分機能を持つ規制緩和や円滑な市場機能は、今後も高めてゆく必要がある。市場機能とは、本来価格が安定化するための機能である事を忘れないで欲しい。財の価格が上がりすぎたら、誰も買わなくなって下がるのである。競争によって価格が下がれば、消費者にはメリットである。創意工夫をたゆみなく続け、社会の変化に適応出来ない限り市場から退席を迫られ、既得権の温存は出来なくなる。規制社会とは、既得権を温存する社会に過ぎず、社会の進化を妨げる。又、潰せないほど巨大化した企業(米国のGMや日本のメガバンク3行など)は、税金で救済せざるを得ないリスクがあるため、事前に分割しておく事が独占禁止法の役割である。

 とすれば、巨大化した政府こそが、民主主義・自由主義・資本主義の最大の障害物になりかねない。国会議員選挙に立候補するほどの優れた日本のリーダーたちは、是非我々庶民の考え付かない良い政策を掲げて欲しい。今、国民に分かってもらえずとも、後世代が評価してくれます。先見の明あった大政治家として、歴史に評価を任せたら如何であろうか。何しろ、アジアも、アフリカも、中米も、南米も、人々の生活水準を上げてゆくことが民族抗争や紛争を減らす最大の方法であろうから、世界が目を見張って、追随するするような、人類の英知の結晶するような社会システムの構築を、各政党に望みたい。現状維持を最大の目標とし、日本をまるで鎖国国家にするような気配は出さないでもらいたい。もはや江戸時代には戻れない。日本は、少子化によって人口が2~3千万人に減る100年後ならいざ知らず、少なくとも当分は人口1億人以上の大国なのであるから、平和の下で国民生活を向上させるノウハウを世界に向かって示すオピニオン・リーダーになって行こう。
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