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2009-09-01 07:36

「政権待機政党」への復活は可能か:自民党

杉浦 正章  政治評論家
 民主党が目指す「4年の政権維持」は長いが、自民党が「4年後の政権奪還」を目指すとすれば気の遠くなるような話だ。総裁・麻生太郎が「自由民主党は必ず再生する。政権を奪還する」と早くも宣戦布告したのなら、準備は早々に整える必要がある。まず1年後の参院選挙での逆転勝利を手始めに、民主党政権を早期衆院解散に追い込んでの奪還態勢整備を目標にする必要がある。名実ともに「政権待機政党」としての出直し改革が必要だ。幸い基盤は崩れたが地方党組織は残っている。この党組織を地道に再構築し、かならず生じる民主党政権の“敵失”を待つしかない。

 まず衆院で119議席という数字は何を意味するかであるが、民主党がこれまで115議席であったことを思えば分かりやすい。結束を維持できれば、野党としての存在感を十分発揮できて、捲土重来も夢ではない議席だ。これが新聞各社の世論調査のナマの数字の通りに、30議席だ50議席だという結果になっていたら再起不能の烙印を押さざるを得なかったであろう。自民党は辛うじて崖っぷちの松の根っこにしがみついたと見るべきであろう。民主党幹事長・岡田克也は4年間政権に固執する構えを見せているが、さすがに小沢一郎の見通しは甘くない。読売新聞によると小沢は、業界の自民党離れを進め、自民党復権を防ぐ狙いから、「最低でも2年間は、民主党政権で予算編成しないといけない」と周囲に漏らしているという。とても4年は持たないと見ていることになる。小泉チルドレン同様に小沢チルドレンが“バブル”であることを承知しているのである。経済界も官界もはたして民主党政権が続くのかどうかが最大の関心事となっており、当分軸足を民主党に移しながらも、まだ自民党にも置いておくという形であろう。要するに二股を当分かけ続けるだろう。解散までの期間は最短が「バカヤロー解散」までのたった5カ月、平均で2年8か月というのが相場だ。

 それではどう建て直すかだが、最大の敗因は何度も指摘してきたとおり、自民党政権が「年金・格差・後期高齢者医療制度」と国民生活の“聖域”に土足でずかずか入り込んだことにある。歴代指導者の能力不足がそこに気づかず傷を大きくし、無責任な政権放棄がこれを決定的なものにした。数の上では小泉郵政選挙の「まやかし」で一息ついたが、やがては格差拡大というツケを払う破目に至ったのだ。自民党が「国民生活向上」を最大の眼目として、戦後実績を上げてきた結党の原点が見失われた結果でもある。幸いにも自民党には戦後半世紀に亘り政権を担当してきた実績とノウハウがある。また民主党の公約、外交安保路線など、国会で追及できる矛盾は山積している。子供手当、高速道路無料化、外交安保路線のどれ一つを取っても「無茶な政策」ばかりである。無理に実現しようとすれば財政は破たんし、日米関係を危機的状況に置きかねない。堂々と国会で政策論争を挑めばよい。もちろん二代続いた民主党代表の政治資金疑惑も絶好の材料だ。

 問題は次期総裁に誰を選出するかだが、「選挙向けの顔」重視の指導者選びは、もう国民があきあきしている。むしろまじめでフレッシュでクリーンな人材に目を向けるべきだろう。舛添要一はその意味でテレポリティクスの人気に頼り過ぎる気がする。必死に総選挙を這い上がってきた自民党衆院議員らにとって参院議員の指導者は違和感があるだろう。石破茂か加藤紘一か谷垣禎一あたりから選ぶのがよいと思う。ただし「首相指名で麻生と書くのか」などという些末な問題へ議論が流れるのは旧態依然である。加藤も石破も拘泥しすぎると、政治家の小ささが目立つことになる。
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