国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-09-17 09:47

(連載)「友愛」外交と国際協調(2)

角田 勝彦  団体役員
 さらに国連総会演説、各種サミット演説、オバマ始め各国首脳との会談などの機会に、鳩山首相がオバマの国際協調の理念を支持し、友愛の理念を敷衍することは、抽象的美辞麗句と言われても、我が国の変化を認識させ、その存在感を高めるのに役立とう。とくに、核不拡散については、我が国には「核の傘」弱体化を懸念する声もあるが、オバマを全面的に支持する姿勢を打ち出すべきだろう。また国際テロ対策とアフガニスタンを含む破綻国家の再建関係を含め、経済協力の増加についても、意思表明を行うことが妥当であろう。

 他方、外交では、気軽な一言が国際的反響を呼び重大な結果を生むことがある。鳩山代表も、ニューヨーク・タイムズ(電子版)などに掲載されたその論文要旨への「反米姿勢が強い」との批判で、この危険性を実感しただろう。しかも今度は日本の首相の発言となるのである。口は慎むべきである。とくに地球温暖化問題について、鳩山代表が、9月7日、条件付ながら「2020年までに対1990年比で25%の排出量削減を目指す」と表明したことへの内外の関心は大きい。EUは、これを絶賛しているが、そこには、地球温暖化に対する危機感に加え、温室効果ガス削減を排出量取引システムなどで実利につなげるしたたかな戦略がある。我が国の新目標は、米国、中国、さらにインドなどの参加が前提であることを、忘れずに表明し続けることが重要である。

 この関連で筆者が気がかりなのは、報道によれば、オバマとの電話会談で外務省が蚊帳の外に置かれたことである。首脳外交には危険がつきまとう。優秀な官僚機構を利用せずに、新首相が限られた腹心と交渉に臨めば、国益を損じることは明らかである。意図せぬ密約にも結びつきかねない。少なくとも当分の間は具体的案件については、十分な官僚の補佐を得て慎重に対処する心構えが必要である。

 9月9日の「3党(民主、社民、国民新党)連立政権合意書」は、日米関係について、緊密で対等な日米関係をつくること及び日米地位協定の改定を提起し米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨むことを明記している。政権交代が生じた以上、米国に対し自民党時代と違う路線が取られるのは想定内である。しかし、是正の交渉は、派手な演出を避け、できるだけ地道に行う必要がある。幸いマスコミと国民は、新政権の国内面での変革に対し、外交面より大きな関心を寄せている。外交面での変革は国の実益優先で静かに行うべきである。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム