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2009-11-04 07:34

鳩山献金をめぐり水面下で与野党暗闘

杉浦正章  政治評論家
 マスコミの方がしびれを切らし始めた。首相・鳩山由紀夫に対する数々の献金疑惑を自民党が突っ込まないからである。本会議代表質問でも予算委員会質問でも申し合わせたかのようにさらりと触れるだけでとどめている。普天間などでは徹底追及をしているのになぜか。選挙に負けたのに、かさにかかってやるのは不利との判断が、一部にあるようだが、そんな甘い判断だけだろうか。おそらく自民党は、献金問題への対応が唯一残された政権攻撃の突破口と位置づけて、満を持しているのだろう。しかしこの“大魚”は、満を持していたら糸を食いちぎられて、深淵に逃げ込まれるかもしれない。まさに食うか食われるかの微妙な駆け引きが、舞台裏で展開されているのだ。

 毎日新聞は11月3日付の社説で、前日の自民党質問に関して「理解に苦しむのは、鳩山首相自身の『故人』献金問題にあまり時間が割かれなかったことだ」と疑問を投げかけ、「機会あるごとに政権を厳しく追及するのが、野党の責務だ。まだ自民党は『与党ぼけしている』と疑われても仕方がない」と切り捨てた。産経新聞も「この問題を自民党の大島理森幹事長らが取り上げたが、その切り込みは十分だったとはいえない」と批判している。総裁・谷垣禎一以下幹事長・大島理森ら大物の追及はことごとく、舌足らずにとどまっている。まさか民主党・国対委員長・山岡賢次から「政治の品位を落とすことになり、質問する側も、される側も、ダメージを受ける」と言われたからではあるまい。高支持率の政権を批判すれば、確かにはね返る部分があるだろうが、ことは「首相の犯罪」につながりかねない問題である。追及しない方がおかしいのは、新聞の社説が証明している。

 この新聞のじれったさは分からぬでもないが、この絶好のチャンスを自民党が見逃すはずがない。「慎重に対応しよう」との秘密裏の申し合わせが、同党首脳の間で交わされているからにきまっている。理由は検察の捜査がもう少し煮詰まって、検察筋から情報が漏れたり、伝わってきたときに、爆弾質問で一挙に攻勢を仕掛けようという狙いであろう。質問に立った町村信孝は、当該秘書は確実に立件されて有罪になるとの判断を固めて、それを公言もしている。作戦としては、これほどの政権直撃材料だからこそ、小出しに使って、鳩山の言い訳を“定着”させてしまっては、元も子もなくなると言う判断であろう。一部新聞や民放テレビに、「拝鳩・拝民主」ともいえる無条件の支持機運が存在している中だけに、戦いを慎重に行いたいのであろう。例えば鳩山が、新たに浮かび上がった2008年度所得の申告漏れについても、「ポカをしてしまった」で通るのである。一連の疑惑は自民党政権では断末魔にまで追い込まれていた性格のものだ。とりわけ一部民放テレビに疑惑無視が著しい。大島が質問の最後に、鳩山献金問題での集中審議と参考人招致を要求したのがポイントだ。集中審議で一挙に片をつけることを狙っているのだろう。また4日の自民党質問でも失言などを狙って“地ならし”程度は行うだろう。

 これに対して鳩山がいかに防塁を築くかだが、鳩山は過去の自民党政権の同種の事件に対して引くに引けない発言を繰り返してしまっている。加藤紘一秘書による脱税容疑で「秘書の罪は国会議員の罪だ。早く出処進退を」とせまり、加藤は議員辞職した。自民党議員の政治資金疑惑に関連して「資金管理団体、政党支部の代表者は政治家本人。領収書の多重使用などは事務的なミスではない」、鈴木宗男の会計責任者の逮捕は、「議員本人の責任であり、改めて辞任を強く求める 」など枚挙にいとまがない。これらの発言は、そのままピタリと鳩山批判にはね返る。今回の虚偽献金事件での対応に言い訳の利かない自縄自縛となって作用するに違いない。鳩山は11月2日の予算委で与党議員にわざと献金問題を質問させ、これに陳謝することで、衝撃緩和を狙ったようだ。姑息(こそく)な八百長質問だが、そこまで追い詰められていることを物語っている。どうすればこの急場を逃れられるか。まさに見物だ。
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